関東で抗争勃発か

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 ヤクザ組織の情勢ニュースの発信に優れている本部長(@yokohamabj)が12月20日、ツイッター上で「稲川会堀井一家と住吉会幸平一家でトラブル。堀井一家の役職者一人が死亡、一人は軽傷とのこと。」とツイートしました。

 同日、東京都新宿区のビルで複数の銃撃の痕が見つかりました。ビルには住吉会系列の事務所が入っていました。神奈川県伊勢原市の病院で放置され死亡した人物が稲川会系の組長であったことから、警視庁はその報復と見ているようです。(*1)

 本部長(@yokohamabj)が述べた稲川会の堀井一家とは、神奈川県藤沢市に拠点を持つ2次団体です。トップは中村等総長です(*2)。総長の代目は「十一」であり、歴史のある組織であることが伺えます(*2)。中村等は今年4月に先代総長から跡目を引き継いだばかりです(*2)。中村等は1次団体・稲川会において「理事長付」という役職に就いています(*2)。稲川会ナンバー2に位置する理事長の「秘書」的な役割を担う役職です。仕事の性格上、稲川会理事長である内堀和也からの高い評価がなければ任用はされません。

 稲川会の理事長付は2名です(*2)。中村等に加えて、中村等と同じく今年4月に碑文谷一家総長の跡目を引き継いだ熊谷正敏も務めています(*2)。2000年代フランスの監督により熊谷正敏の組織を対象とした映像作品が作られたこともあり、業界内では名の知れた組長として「熊谷正敏」の名は通っています(*3)。役職が同じであることから、稲川会においては、堀井一家の中村等は熊谷正敏と「同等の位置」にいることが示唆されます。稲川会の上納金は他の1次団体よりも、高額であると言われています(*4)。堀井一家の中村等が内堀和也理事長から高い評価をされていると考えられることから、堀井一家による1次団体・稲川会に対する経済的な貢献は高いことが考えられます。上納金の支払いに窮する2次団体のトップを理事長付には任用しません。以上から、中村等率いる堀井一家は稲川会でも力を持つ2次団体であることが推測されます。

 対する幸平一家は言わずと知れた関東屈指の武闘派組織です。もし一連の事件が、両団体による争いの結果であるならば、事態は長引く可能性もあります。背景には、ヤクザ業界全体の大きな対立構図があります。山口組と神戸山口組という巨大な2団体が現在、対立関係にあります。その対立関係に少なからず、他単体も巻き込まれているのが実情です。特に稲川会は山口組とは1972年以来の親戚縁組の関係にあり、山口組の主流派・弘道会トップの竹内照明と内堀和也は2006年に兄弟盃を交わしており、現在の山口組とは強い同盟関係で結ばれています(*5)。対する幸平一家は、トップの加藤英幸総長が神戸山口組が発足したばかりの2015年9月5日に神戸市の山健組事務所を訪問し、神戸山口組の「支持」を暗に示しました(*6)。幸平一家の上部団体・住吉会は、山口組と交流を持っています。しかし住吉会の中で「抗争部隊」としての役割を果たしてきた幸平一家の存在感は特別です。また住吉会が昔連合型の組織形態であった組織性格も踏まえると、住吉会が幸平一家に強い「拘束力」を持っているとは疑問です。

 つまり堀井一家と幸平一家の争いは、現場の当事者同士の思いとは別に、「山口組と神戸山口組の代理戦争」の意味合いも帯びてくるのです。つまり他の要因が、いつも以上に絡むため、抗争は長引く可能性があります。

<引用・参考文献>

*1 テレビ朝日系(ANN) 12/20(火) 18:44配信

*2 『実話時代』2017年1月号, p22

*3 『闇経済の怪物たち グレービジネスでボロ儲けする人々』(溝口敦、2016年、光文社新書), p 232~234

*4 『山口組 分裂抗争の全内幕』(西岡研介+鈴木智彦+伊藤博敏+夏原武 ほか、2016年、宝島SUGOI文庫), p335

*5 『実話時代』2017年1月号, p20

*6 『山口組 分裂抗争の全内幕』(西岡研介+鈴木智彦+伊藤博敏+夏原武 ほか、2016年、宝島SUGOI文庫), p305

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