ヤクザ組織間抗争で用いられる拳銃の供給源

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 ヤクザ組織間の抗争で用いられる拳銃の供給経路は様々です。しかし経路を辿ると、大まかに2つの供給源があると考えられます。1つはフィリピンの密造拳銃工場からの経路です(*1)。もう1つは、外国軍からの横流し経路です(*2)。日本の場合、猟銃の所持を除けば、一般人の銃所持は法律的に認められていません。また国内の自衛隊及び警察組織からの拳銃の横流し事例を現在聞くことはなく、主たる経路としては考えられません。ヤクザ組織間の抗争で用いられる拳銃は、外国及び日本にある外国組織から主に流入していると考えられます。フィリピンのマニラ近郊に密造拳銃工場が沢山あります(*1)。合法的な工場ではない為、手に入れられるのはコピー(模造)拳銃となります(*1)。マニラ近郊にある密造拳銃工場は、日本のヤクザ組織と深いつながりがあります(*1)。巧妙な手口で日本に密輸されていることが考えられます。過去には、フィリピンの密造技術者を日本に呼び寄せて、日本で密造させるという事例もありました(*3)。まず拳銃を細かく分解した上で、複数人で日本に持ち運びます(*3)。持ち運んだパーツを「型」として、日本の良質な材料を用いてコピーパーツを複数作り、複数の拳銃を作るという計画でした(*3)。拳銃の形態で国境を超えないので、摘発する確率は低くなります。また日本の良質な材料を用いるので、品質も良くなります。考えられた悪巧みであったといえます。

 一方、外国軍からの横流しにおいて、主な供給源となっているのはロシア、中国、アメリカの軍です(*2)。アメリカ軍からの横流しの場合、沖縄に駐留するアメリカ軍からの横流しと考えられています(*2)。沖縄県のヤクザ組織間抗争において、沖縄県のヤクザ組織の武装力が高かった背景には、沖縄のアメリカ軍の存在がありました(*4)。合法的に存在が認められる武器メーカーの主たる顧客層は、各国の正規軍です。武器メーカーはテロ組織及び裏社会の組織に拳銃を含めた火器を販売することは許されていません。しかし現実には、多くのテロ組織や裏社会の組織が潤沢に火器を保有しています。自前でコピー製品を製造する組織もあるのでしょうが、恐らく正規軍からの横流しで主に「調達」していると考えられます。正規軍から直接テロ組織や裏社会の組織に渡る場合もあれば、何個かのクッションを置いてテロ組織や裏社会の組織に渡る場合があると考えられます。

 横流しを行っている主体は、小遣い稼ぎ目的の兵士個人もあるでしょうし、正規軍の中のある組織の場合もあるでしょう。火器を正規ルートで仕入れられない裏社会において、横流しの火器は「高値」で売れる為、正規軍関係者にとって火器の横流しは「良い副業」となるのです。

 しかし日本において、ヤクザ組織間の拳銃を用いた抗争は厳罰の対象となります。特に、1999年に施行された組織的犯罪処罰法により、抗争間で敵対組織組員を殺害した場合、実行した組織の2次団体トップも処罰される司法環境になっています(*5)。抗争において拳銃使用を控える傾向がヤクザ社会にあります。裏社会において拳銃の需要は現在少ないと考えられます。

<引用・参考文献>

*1 『ヤクザ1000人に会いました!』(鈴木智彦、2012年、宝島SUGOI文庫), p62-63

*2 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p194

*3 『極道たちの塀の中』(小田悦治、1993年、にちぶん文庫), p82-83

*4 『戦後ヤクザ抗争史』(永田哲朗、2011年、文庫ぎんが堂), p69

*5 『最新ビジュアルDX版! 山口組分裂「六神抗争」365日の全内幕』(宝島特別取材班編、2016年、宝島社)「弘道会と山健組の衝突を招いたカネと暴力のバランスシート!」(猫組長), p140-141

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