楽天社員の覚せい剤密輸事件

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 ネット通販大手楽天の30代社員男性が覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で警視庁に逮捕されたことが明らかになりました(*1)。逮捕された社員は2008年から台湾に頻繁に渡航しており、捕まった場面も台湾から羽田空港に帰国した際行われた荷物チェックにおいてでした(*1)。また社員の自宅を捜索したところ、ガラスパイプ20本や小袋約100枚が押収されました(*1)。件の社員が覚せい剤を使用と販売していたことが濃厚です。

 楽天社員という表社会に生きる人物が、裏社会の主流派ビジネスである覚せい剤ビジネスに手を染めていたことに、まず驚きが起きます。ヤクザ組織の「使い走り」として役割を果たしていた可能性も否定はできません。しかし件の社員の仕入れ先が台湾であったことから、件の社員の個人ビジネスとして覚せい剤を扱っていた可能性が高いです。

 日本国内における覚せい剤の流通経路は「ヤクザ組織間のつながり」を基にして構築されてきました(*2)。全国各地に存在するヤクザ組織によって形成された販売網は、独占的であり、ヤクザ組織の懐を潤わせてきました(*2)。日本国内で活動する覚せい剤の売人は「仕入れ先」がヤクザ組織関連である以上、ヤクザ組織の「許可」を前提に売買することが求められます。ヤクザ組織の意向を無視した売買には、暴力的な制裁が待っています。一般人が副業として、簡単に始められるものではありません。

 しかし台湾などの外国の覚せい剤市場においては、ヤクザ組織の関与は低くなります。一般人でも、台湾から直接仕入れることができれば、ヤクザ組織との関わりを避けることができます。当然台湾の裏社会組織との関係はできますが、普段活動する日本にまで台湾の裏社会組織が絡んでくることは、支払いを怠るなどしない限り、ないと考えられます。件の社員は、莫大な利ザヤを見込める覚せい剤ビジネスを始めるにあたって、ヤクザ組織との関わりを避けることも考えて、台湾からの直接仕入れを実行したのだと考えられます。台湾への頻繁な渡航はお金がかかりますが、覚せい剤の密売で充分にもとはとれているはずです。

 今後の焦点は販売先です。件の社員の覚せい剤の販売先が、ヤクザ組織関連の売人と被っていたら、ヤクザ組織にビジネスの存在が発覚して制裁が与えられたはずです。2008年から台湾に頻繁に行っていたことから、件の社員の覚せい剤ビジネス歴は10年近いと推定されます。件の社員は、ヤクザ組織ルートとは異なる販売網を有していた可能性が考えられます。一体どういう客層がいたのか…。捜査の進展が待たれます。また個人ビジネスであった場合、弱点もあります。件の社員が一般人である以上、違法領域ビジネスにおいて必須の暴力装置を持たないことです。暴力装置を持たない売人の場合、客側から足元を見られやすいです。今回逮捕に至った経緯も、結局その辺りにあるかもしれません。

<引用・参考文献>

*1 朝日新聞サイト「台湾から覚醒剤を持ち込んだ疑い、楽天社員を逮捕」2017年2月21日19時14分配信

*2 『薬物とセックス』(溝口敦、2016年、新潮新書), p130

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