縄張りに関する浅野組の考え方

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 ヤクザ組織において自組織の縄張り(支配地域)防衛は、死活的な課題です。1次団体のヤクザ組織・浅野組は、縄張りの防衛に関して、独自の考えを持っています。浅野組は、岡山県最西部に位置する笠岡市に本拠地を置いています(*1)。1955年頃、浅野眞一によって立ち上げられたヤクザ組織です(*1)。現在、組織トップとして浅野組を率いる中岡豊(五代目組長)が、組長代行時代の2014年『実話時代』(2014年11月号)のインダビューで、縄張りに関することを述べています。

 「うちのシマ内には何人たりとも絶対に入って来させないし、もちろんうちも他所のシマ内へは出て行きません」(『実話時代』2014年11月号, p17)と中岡豊は述べています。シマ(縄張り)の徹底的な防衛に加えて、「対外侵攻」という選択肢を捨てていることに浅野組の特徴があります。専守防衛の戦略です。他地域の縄張りを侵さなければ、因縁を持たれず、他のヤクザ組織と揉め事自体が減ります。結果、抗争に発展することなく、自組織の縄張りを平和的に維持していくことができます。

 また「隣接する組織とは身内同士のように親しくつきあっていますが、そういう仲であってもうちのシマ内に入る時には必ず本部に『こういう用件で入ります』という連絡を入れてもらっています。(略)うちの人間が隣接する組織のシマ内に入る場合にも必ずそこの本部に連絡を入れます」とも中岡豊は述べています(『実話時代』2014年11月号, p17-18)。つまり「他組織の縄張りに入る際、本部に連絡を入れる」というルールを浅野組は課して訳です。

 浅野組が一方的に相手組織だけに課すルールではなく、浅野組もそのルールの拘束下とすることにより、ルールに公平性を帯びさせています。浅野組はルールを遵守しているのに、他組織がルールを破ったことにより抗争となった場合、和解時に相手組織に非があるという展開に持っていけます。暴力が優先されるヤクザ社会においても、一定の秩序体系を維持してきた日本のヤクザ社会は「業界ルール」を軽んじることはできません。

 浅野組が専守防衛をとる理由として、構成員数で約90人という小規模組織ということがあります(*2)。広域団体の山口組や神戸山口組の下部組織が中国地方には点在しています。中国地方の小規模組織が対外侵攻して抗争に至ることは得策ではないのです。

 浅野組は岡山県西部に影響力を持っていますが、広島県東部の福山市にも影響力を持っています(*1)。中岡豊の出身母体である浅野組2次団体・中岡組の事務所は広島県福山市にあります(*1)。福山市は2017年1月末現在で、人口約47万人を抱える中核市です(*3)。福山市といえば、「パツ屋」という裏風俗が知られています(*4)。パツ屋ではマンションでの売春サービスが提供されており、40分1万2000円という相場料金が安いのも特徴です(*4)。また福山市では本サロという裏風俗サービスもあります(*4)。福山市にはヤクザ組織の関与できる裏ビジネスが存在しています。

 ちなみに中岡組では、若手組員には部屋住みが約7年課せられます(*1)。昔からヤクザ組織は組織人材として不良青年をリクルートしてきました。ヤクザ組織は不良青年に組織的規律を身に付けさせるために、事務所や親分宅で住まわせる「部屋住み」をさせてきました(*5)。不良青年を住まわせた上で、生活指導からしていくというものです(*5)。長らく「部屋住み」は「ヤクザ組織の教育システム」として機能してきました。しかし近年では部屋住みを実施しない組織が多くなっています(*5)。以上のことを踏まえると、中岡組の部屋住み期間が異常に長いことが分かります。その為、ヤクザ組織の組織人としては優秀な者が中岡組から多く出ていると予想されます。

<引用・参考文献>

*1 『実話時代』2014年11月号, p14-19

*2 警察庁「平成28年上半期における暴力団情勢」

*3 福山市サイト(https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/

*4『週刊実話』2017年1月26日号「全国穴場射精スポット㉘ここでヌケ!」, p204

*5 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p56-67

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