テキヤ組織は日本に現在、数多くあります。テキヤ組織は警察当局から「暴力団」つまりヤクザ組織として捉えられてきました(*1)。2017年現在、日本最大のテキヤ組織・極東会が、テキヤ組織として唯一「指定暴力団」として公安委員会から指定されています。しかし極東会以外のテキヤ組織も「非指定の暴力団」として現在扱われています(*1)。
「非指定の暴力団」として扱われている有名なテキヤ組織としては、杉東会、飯島、姉ヶ崎、丁字家、箸家、博労会などがあります(*1)。2011年以降全国での暴排条例施行で、全国各地の祭りやイベントにおいて、テキヤ組織の露店を排除する傾向が強まっています(*2)。
露店営業希望者は「自治体の街商協同組合」に入り、「組合員」になる必要があります(*3)。行政側は組合員のみに露店営業を許可しており、またテキヤ組織の構成員の入会を認めていません(*3)。テキヤ組織の構成員は露店営業できない環境下に置かれているのです。
警察当局は営業1カ月前に露店営業者に名前と写真が入った書類を提出させ、テキヤ組織の構成員が含まれていないかチェックしています(*2)。テキヤ組織側は構成員を露店に立たせず、構成員の家族またはアルバイトを立たせることで対応しています(*2)。以上から、構成員の家族またはアルバイトが「街商協同組合の組合員」になっていることが推測されます。
構成員は現場までは同行しています(*2)。おそらく構成員の仕事は、露店の裏方業務に特化していると考えられます。寺社の祭礼の中には、現在も寺社側がテキヤ組織の露店を認めている場合もあります(*1) (*2)。
テキヤ組織は元々、加入希望者の前歴を問わない組織風土があります(*4)。犯罪者が入り込みやすい集団であり、他の職集団に比べて、暴力的要素が濃い組織です(*4)。またテキヤ組織には、構成員を親分-子分の関係で扱っています(*5)。ジャーナリストの溝口敦は、警察当局がテキヤ組織を暴力団扱いにする理由として、テキヤ組織の親分-子分関係に見られる擬制血縁関係や、本家-分家などの階層構造の存在を挙げています(*1)。
極東会だけが「指定暴力団」になっているのは、他のテキヤ組織よりも「暴力的傾向の強い組織」と警察当局から見なされているからでしょう。暴対法に基づく「指定暴力団」と極東会が指定されたのは1993年7月でした(*6)。1961~1967年、極東会は他のグループとともに極東愛桜連合会という組織を結成し活動していました(*7)。1964年から開始された警察庁のヤクザ組織に対する厳しい取締り運動においても、極東愛桜連合会は「広域指定暴力団」としてテキヤ組織で唯一指定されています(*8)。極東会の初代関口愛治は横浜や浅草でテキヤ稼業の修行をした後、大塚に「極東秘密探査局」という探偵社を設立します(*9)。探偵社に端を発する関口グループ(後の極東会)はテキヤ組織として、太平洋戦争後、伸張していきます(*10)。
テキヤ組織として新興団体である関口グループは、露店の縄張りである「庭場」を持っていませんでした(*10)。縄張りを持たない場合、地方の縁日や祭りに行って、庭場を持つテキヤ組織(庭主)から場所を貸してもらい露店営業する「タビニン」の仕事が主になっていきます(*11)。関口グループもこの「タビニン」をしていました(*10)。同時に、太平洋戦争後、関口グループは大塚に近い池袋や新宿にも進出していきます(*10)。池袋においてはテキヤ稼業ではなく、景品買い、ノミ行為、賭博、人夫出し、キャバレーの用心棒、債権取り立てなどの多角的な裏稼業に手を伸ばしていたことが当時の警視庁の資料で明らかになっています(*10)。
テキヤ稼業の縄張りを持たなかったこと、また池袋と新宿に進出できたことから、関口グループは都市型の裏稼業に取り組ことになったと考えられます(*10)。裏稼業に本格的に手を出すと、組織内で犯罪行為をする者が多くなり、他組織と揉めると暴力的手段を行使することになります。結果、関口グループつまり極東会は、警察当局からマークされるようになっていったと考えられます。
<引用・参考文献>
*1 『溶けていく暴力団』(溝口敦、2013年、講談社+α新書), p87-94
*2 『実話時代』2015年10月号「テキヤ組織・親分、露天商、現場関係者に訊いた 「明日」はどっちだ!」(大貫説夫), p34-40
*3 『テキヤと社会主義 1920年代の寅さんたち』(猪野健治、2015年、筑摩書房), p195-196
*4 『テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る』(厚香苗、2014年、光文社新書), p85-86
*5 『テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る』, p139-142
*6警察庁「平成16年の暴力団情勢」
*7 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』(実話時代編集部編、2003年、三和出版), p72
*8 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』, p98
*9 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』, p33-43
*10 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ!』, p10-12
*11 『テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る』, p163
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