1991年住吉会は直参制度（1次団体を「上位団体」、2次団体を「下位団体」とする垂直型の組織体制）を導入しました(*1)。住吉会の前身は「住吉連合会」でした (*2)。住吉連合会は1958年に発足した「港会」を源流としました(*3)。1991年以前の1次団体・住吉会（港会～住吉連合会）は連合型の組織形態をとっていました(*1)。
直参制度を導入するヤクザ組織は盃事を執り行わなければなりませんでした(*4)。実際直参制度導入にあたり当時の住吉会トップ西口茂男会長は2次団体トップと「親子盃」もしくは「兄弟盃」を交わしました(*1)。親子盃では西口茂男会長が「親分」、2次団体トップが「子分」となり、両者の間に「親分-子分」関係が形成されました。兄弟盃では西口茂男会長が「兄」、2次団体トップが「舎弟」となり、両者の間に「兄-舎弟」関係が形成されました。つまり親子盃もしくは兄弟盃を交わしたことにより、西口茂男会長と2次団体トップの間に上下関係が形成されたことが分かります。親子盃や兄弟盃が直参制度を担保していたのです。
1998年西口茂男に代わり福田晴瞭が住吉会会長に就きました(*5)。福田晴瞭会長は2次団体トップと親子盃を交わしませんでした (*5)。一方福田晴瞭会長時代（在任期間：1998～2014年）、2次団体は「住吉一家」の傘下に入りました(*5)。住吉一家を間に挟むことで、従来の2次団体は名目上「住吉会3次団体」になりました。住吉一家トップ職は「総長」でした(*5)。住吉一家総長も2次団体トップと親子盃を交わしませんでした(*5)。つまり親子盃を交わすことなく従来の2次団体は住吉一家の傘下に入りました。
住吉一家は港会の主要2次団体でした(*5)。おそらく福田晴瞭会長時代、住吉一家は組織として活動しておらず、「住吉一家総長」というポストだけが名誉職的な意味合いで残っていたと推測されます。福田晴瞭会長は2005年から住吉一家総長にも就きました(*5)。
福田晴瞭会長時代、「住吉会及び住吉一家トップ」と「2次団体トップ」の間で親子盃が交わされなかったことから、住吉会は直参制度を止めていたと考えられます。また福田晴瞭会長時代、幸平一家と土支田一家の2団体は住吉一家の傘下に入りませんでした(*5)。「住吉会2次団体」は住吉一家、幸平一家、土支田一家の3団体だけでした。後に土支田一家は住吉一家の傘下に入りました(*6)。住吉一家の傘下に入らなかったことから、幸平一家と土支田一家においては自立心が他団体より強かったことが推測されます。
幸平一家と土支田一家の間には「古いつながり」がありました。1958年（もしくは1959年）幸平一家、土支田一家、滝野川一家、二本木小川一家の計4団体が友愛会を結成しました(*7) (*8)。4団体は博徒組織でした(*7)。友愛会は港会に加盟しました(*7)。
一方1969～1982年の間(*9)に幸平一家、土支田一家、滝野川一家は、住吉連合（住吉連合会の前身）に加盟したという資料があります(*8)。1964年港会は「住吉会」に改称しました(*7)。翌1965年当時の警察庁による全国的な取締り強化作戦（別名：頂上作戦）を受け、住吉会は解散しました(*7)。1969年旧住吉会勢力は「住吉連合」という新団体を結成し、再起を果たしました(*9)。1965年住吉会解散により友愛会は一旦住吉会から離れることになったものの、後年友愛会の構成団体だった幸平一家、土支田一家、滝野川一家が住吉連合に再び加盟した経緯があったと考えられます。
福田晴瞭会長時代の1次団体・住吉会の組織形態は「連合型」だったことが分かります。ただし住吉会は「直参制度の要素」を少し残す為、従来の2次団体（幸平一家と土支田一家を除く）を住吉一家の傘下に収める形をとったと考えられます。厳密には福田晴瞭会長時代の1次団体・住吉会の組織形態は「連合型と直参制度型の折衷」といえます。
2014年福田晴瞭に代わり関功が住吉会会長に就任しました(*5)。関功会長は直参制度を再導入しました(*5)。直参制度の再導入にあたり関功会長は全ての2次団体トップと親子差盃もしくは兄弟盃を交わしました(*10)。関功会長との親子盃により、幸平一家と土支田一家も「住吉会の傘下」に入りました。
＜引用・参考文献＞
*1 『ヤクザに学ぶ 伸びる男 ダメなヤツ』（山平重樹、2008年、徳間文庫）, p333
*2 『実話時代』2017年3月号, p19
*3 『洋泉社MOOK・ヤクザ・指定24組織の全貌』（有限会社創雄社・実話時代編集部編、2002年、洋泉社）, p44-45
*4 『現代ヤクザ大事典』（実話時代編集部編、2007年、洋泉社）, p37
*5 『別冊 実話時代 龍虎搏つ！広域組織限界解析Special Edition』（2017年6月号増刊）, p87
*6 『山口組 分裂抗争の全内幕』「第9章 住吉会・稲川会に走った激震」（夏原武、2016年、宝島SUGOI文庫）, p291
*7 『洋泉社MOOK・ヤクザ・指定24組織の全貌』（有限会社創雄社・実話時代編集部編、2002年、洋泉社）, p44-49
*8 『洋泉社MOOK・義理回状とヤクザの世界』（有限会社創雄社実話時代編集部編、2001年、洋泉社）, p60
*9 『ヤクザ伝 裏社会の男たち』（山平重樹、2000年、幻冬舎アウトロー文庫）, p134
*10『実話時代』2017年5月号, p27
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