企業間取引決済の1つとして、手形による支払いがあります。手形は有価証券です(*1)。A企業がB企業から商品を仕入れ、代金を手形で支払った場合、A企業が「手形の振出人」、B企業が「手形の受取人」となります(*1)。
手形を振出したいA企業は、銀行に当座預金口座を開設します(*1)。A企業は期日までに「当座預金口座」に手形に記した金額を入金します(*1)。期日になれば、B企業は銀行に手形を持ち込み、額面金額を手にできます(*1)。手形の特長として、「支払いの先延ばし」があります。現在、支払金の現金を有していなくても、手形を振り出すことで取引は成立します。手形により、現金不足に悩む企業も会社経営を続けられます。
一方、受取人にとって手形決済は「入金の先延ばし」を意味します。銀行は受取人に対し、期日前でも手形を現金に換えてくれますが、手数料を取ります(*2)。期日前に手形を銀行に持ち込めば、受取人は額面より低い金額を受け取ります。
振出人が期日までに当座預金口座に額面金額を入金せず、受取人が額面金額を手にできなかったことを、「不渡り」といいます(*2)。
企業の経営者(振出人)に手形を「預かる」と言って、そのまま持ち逃げする者がいました(*3)。手形を持ち逃げした者は「手形パクリ屋」と呼ばれました(*3)。パクられた手形が「善意の第三者」に渡った場合、振出人にその善意の第三者に決済をしなければなりませんでした(*3)。
<引用・参考文献>
*1 『ウラ金融』(青木雄二、2002年、徳間文庫), p91
*2 『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版), p18-21
*3 『ミナミの帝王 パクリと詐欺の超手口』(郷力也・天王寺大編著、藤原義恭監修、1997年、日本文芸社),p59-60
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