10月10日の射殺事件から読み取れるもの

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 10月10日午後2時半頃、神戸市の山健組本部前で、神戸山口組2次団体・山健組の組員2人が射殺される事件が起きました(*1)。射殺犯は、神戸山口組と抗争中の山口組2次団体・弘道会の組員(1人)でした(*1)。当日、山健組定例会が山健組本部で開かれていました(*1)。定例会の取材の為に、報道陣が山健組本部に集まっていました(*1)。射殺犯の弘道会組員はカメラマンに変装し、報道陣に紛れこんでいました(*1)。

 事件発生の午後2時半頃、山健組本部近くに停められた乗用車の中に射殺犯の弘道会組員はいました(*1)。山健組は乗用車の存在に気付き、山健組本部を警備中の警察官に、職務質問を依頼しました(*1)。警察官は弘道会組員に職務質問を実施しました(*1)。さらに山健組組員3人も弘道会組員のところに向かいました(*1)。山健組組員3人の接近で、弘道会組員は拳銃を取り出し、山健組組員に向け発砲しました(*1)。結果、山健組組員2人が銃撃により死亡しました(*1)。

 8月21日、神戸市の弘道会拠点で弘道会組員が銃撃され、重傷を負いました(*1)。銃撃は山健組によるものと見られており、10月10日の銃撃事件は「8月21日の報復」と考えられます。しかし10月10日の銃撃事件は、過去の弘道会の銃撃事件と様相が異なります。

 弘道会は2003年4~6月、住吉会2次団体・親和会と抗争をしました(*2)。抗争の結果、5人が死亡、4人が重軽傷を負いました(*2)。死者5人は親和会側から出ました(*2)。5人とも射殺による死亡でした(*2)。弘道会側が親和会組員5人を射殺したのです。

 射殺場所は①「組事務所の駐車場(4月19日、1人死亡)」、②「県営住宅の駐車場(4月21日、1人死亡)」、③「組事務所内(5月5日、2人死亡)」、④「女子高校正門前の県道(5月14日、1人死亡)」でした(*2)。③は押し入り、①②④は待ち伏せによる襲撃でした。4件とも、確かな情報収集と念入りな計画のもと、実行された銃撃事件といえます。親和会の抗争で、弘道会は「好戦的組織」としの存在感を高めました。

 2015年8月以降の山口組分裂抗争においても、弘道会による銃撃事件には、計画性が感じられました。2016年5月31日神戸山口組2次団体・池田組若頭が弘道会組員にマンション駐車場にて射殺されました(*3)。事前に弘道会側が情報収集をした上での銃撃だったことが推測されます。

 一方、10月10日の件は、山健組側に迫られた結果、突発的に起こした銃撃という印象が強いです。今回の銃撃が、弘道会の命令系統によるものか、弘道会の命令系統から外れた射殺犯の単独によるものかは、現時点では分かりません。前者であれば、弘道会の作戦の遂行力が問われる結果になりました。後者であれば、弘道会内の規律が弱まっているとも読み取れる結果になりました。

<引用・参考文献>

*1 『週刊実話』2019年10月31日号, p32-36

*2 『戦後ヤクザ抗争史』(永田哲朗、2011年、文庫ぎんが堂), p295-299

*3 『山口組 分裂抗争の全内幕』(西岡研介+鈴木智彦+伊藤博敏+夏原武 ほか、2016年、宝島SUGOI文庫), p220

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