東亜友愛事業組合沖縄支部

　かつて沖縄県に「東亜友愛事業組合沖縄支部」というヤクザ組織が活動していました(*1)。東亜友愛事業組合は関東を拠点に活動するヤクザ組織で、前身は「東声会」でした(*2)。1957年町井久之が東声会を結成しました(*2)。

　在日朝鮮人の町井久之（本名：鄭建永）は戦後、銀座に「中央商会」（事件屋）や「中央興行社」（興行会社）を興しました(*2)。一方で町井久之は朝鮮人系愚連隊を影響下に置いていきました(*2) (*3)。町井久之の企業群及び愚連隊群は「町井一家」などと総称されていました(*3)。先述したように町井久之は1957年東声会を結成しました。旧町井一家勢力が東声会の中核を担いました(*3)。町井久之は町井一家勢力の統括団体として「東声会」を結成したと考えられます。

　翌1958年東声会は構成員数500人を超える規模までに急拡大していきました(*2)。元々東声会は縄張りを持っていませんでした(*2)。縄張りを持たないがゆえに、東声会は拡張路線をとったのかもしれません。1964年からの第一次頂上作戦（ヤクザ組織に対する警察当局の取締り強化）を受けて、1966年9月東声会は解散しました(*2)。

　1967年、旧東声会勢力は「東亜友愛事業組合」という事業団体を発足させました(*2)。先述したように、東亜友愛事業組合は事業団体と名乗ったものの、実態はヤクザ組織でした。東亜友愛事業組合トップの理事長職には、右翼の大物でもあった平野富士松が就きました(*2)。町井久之は右翼の大物・児玉誉士夫と交流があったことから右翼思想を持っていました(*2)。東亜友愛事業組合は右翼思想と親和性の高い組織だったと考えられます。

　「東亜友愛事業組合沖縄支部」の源流は「誠会」という右翼団体でした(*1)。誠会は1966年1月宜保俊夫によって設立されました(*1)。設立2カ月後の1966年3月宜保俊夫は児玉誉士夫の助言により、町井久之と兄弟杯を交わしました(*1)。兄弟杯の交わしにより、誠会は「東声会沖縄支部」に改称しました(*1)。

　後に1次団体名が東亜友愛事業組合に変わったのを機に、東声会沖縄支部は「東亜友愛事業組合沖縄支部」に改称されました(*1)。1967年頃、東亜友愛事業組合沖縄支部の構成員は約100人でした(*1)。組織設立から2カ月という短期間に東声会に入った経緯から、誠会の設立当初から東声会の関与があったと考えられます。

　東亜友愛事業組合沖縄支部は、沖縄の教職員組合及び左翼政党を敵対視していました(*1)。1967年3月東亜友愛事業組合沖縄支部の構成員が沖縄教職員組合の政経部長を襲撃する事件を起こしました(*1)。

　1次団体・東亜友愛事業組合では二村昭平がトップ職の理事長に就くと、組織名を「東亜友愛」に改称しました(*2)。後に二村昭平は東亜友愛を「東亜会」に改称しました(*2)。また二村昭平は東亜会トップ職を「会長」に改めました(*4)。1999年6月金海芳雄が二村昭平会長の跡を継ぎ、東亜会会長に就任しました(*2)。2016年早野泰が金海芳雄会長の跡を継ぎ会長に就任し、また組織名を東亜会から「東声会」に改めました(*2)。

　1999年時点、東亜友愛事業組合沖縄支部の後継団体と考えられる「東亜会誼興会」が沖縄県で活動していました(*5)。1999年時点、東亜会誼興会の構成員は約40人でした(*5)。

　また沖縄県警察本部の資料によれば、2012年3月「東亜会二代目誼興業」が解散しました(*6)。

　手元の資料だけに基づけば「東亜友愛事業組合沖縄支部」（1967年時点）→「東亜会誼興会」（1999年時点）→「東亜会二代目誼興業」（2012年時点）という順に、組織名が変わっていった可能性があります。

＜引用・参考文献＞

*1 『洋泉社MOOK・沖縄ヤクザ50年戦争』（有限会社創雄社『実話時代』田中博昭編、2004年、洋泉社）, p68,74-76

*2 『実話時代』2016年12月号, p32-36

*3 『洋泉社MOOK・勃発！関東ヤクザ戦争』（有限会社創雄社『実話時代』田中博昭編、2002年、洋泉社）, p70-71

*4 『実話時代』2018年4月号「シリーズ/組織と闘将　第四回　東亜友愛事業組合常任理事　城島連合会会長　城島健慈」（本郷海）,p30

*5 『洋泉社MOOK・勃発！関東ヤクザ戦争』, p157

*6 沖縄県警察本部「沖縄県警察50年の歩み」（2022年） , p98

https://www.police.pref.okinawa.jp/docs/2022112800024/file_contents/R4_kennkei_ayumi_50.pdf