アオタン

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 1965年までヤクザ組織は興行界で大きな影響力を及ぼしていました(*1)。ヤクザ組織の中には、自ら興行組織を作る組織もありました(*1)。代表例が神戸芸能社(1957年設立)を作った山口組です(*2)。神戸芸能社の社長には、山口組三代目組長の田岡一雄が就いていました(*2)。

 神戸芸能社は美空ひばり、田端義夫、高田浩吉といった有名芸能人の興行権を独占していました(*3)。当時の美空ひばりの出演料(1日2回公演)は70万円で、芸能人の中で最高額といわれていました(*3)。神戸芸能社は美空ひばり等の芸能人による自主興行を打っていました。(*3)

 しかし興行組織を作っても、自主興行を打たないヤクザ組織もありました(*4)。自主興行を打たないヤクザ組織は、自身の縄張りで行われる興行組織(主催者側)から、金を取っていました(*4)。主催者側は「挨拶料」の名目で、地元のヤクザ組織に金を支払っていました(*1)。

 挨拶料を受け取るヤクザ組織にはさらに、「興行の無料入場」という特権が与えられました(*5)。無料入場は別名「アオタン」と呼ばれました(*5)。

 1964年から警察庁はヤクザ組織に対する取締りを強化しました(通称「頂上作戦」)(*6)。取締り強化の一環で、ヤクザ組織の関与する興行は公共施設を利用できなくなりました(*1)。以降、ヤクザ組織は興行界で影響力を弱めていきました(*1)。

<引用・参考文献>

*1 『興行界の顔役』(猪野健治、2004年、ちくま文庫), p91-95

*2 『興行界の顔役』, p77

*3 『興行界の顔役』, p86-87

*4 『興行界の顔役』, p79

*5 『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(鈴木智彦、2018年、小学館), p126

*6 『現代ヤクザ大事典』(実話時代編集部編、2007年、洋泉社), p168

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