会津屋というテキヤ組織のグループがありました(*1)。会津屋の宗家初代は「鈴木常三郎」という人物が位置付けられています(*1)。宗家は「本家」を意味します。おそらく会津屋は鈴木常三郎もしくは鈴木常三郎に近い人物により興されたと考えられます。会津屋は東京の高田馬場駅周辺を庭場にしていた時期（1977年以前）がありました(*1)。会津屋の「分家」や「一家名乗りした組織」は東北(*2)、北海道(*3)で活動していました。
小高龍湖（会津屋宗家四代目松葉武の舎弟分）は1918年（大正七年）夏、札幌を訪れました(*3)。小高龍湖は当時、有田サーカスの全国巡業に関わっていました(*3)。サーカス興行の準備の為、小高龍湖はサーカス団より前に札幌を訪れたのでした(*3)。
昔のテキヤ組織の中には、サーカスなどの興行を手掛ける組織がありました(*4)。サーカスなど仮設興行はテキヤ業界において「高物（タカモノ）」と呼ばれていました(*4)。サーカス以外の高物としては、移動動物園、化物屋敷、女プロレスなどがありました(*4)。1918年時の会津屋グループの小高龍湖は高物で商売をしていたことが分かります。
1918年以降、小高龍湖は札幌を拠点に活動していきました(*3)。小高龍湖を初代とするテキヤ組織が「会津屋小高」（会津屋の「分家」や「一家名乗りした組織」）でした(*5)。小高龍湖が札幌に拠点を置く前後に、会津屋小高は結成されたと考えられます。1939年鴨原茂が会津屋小高二代目を継承しました(*5)。しかし鴨原茂は病弱であった為、小高龍湖がその後も組織運営に関与しました(*5)。鴨原茂の会津屋小高二代目就任は1959年という説もあります(*6)。
太平洋戦争終了（1945年）後、札幌市の愚連隊出身の荏原哲夫が「小高龍湖の実子分」（跡目候補）(*7)として会津屋小高に入りました(*3)。小高龍湖は1939年トップの座を退いたものの、戦後も組織に大きな影響を及ぼしていたことが分かります（1939年鴨原茂の会津屋小高二代目就任の説に従えば）。戦後の札幌市において、荏原哲夫の愚連隊は活発に活動していました(*3)。小高龍湖は「次期トップ」を託すべく、愚連隊出身の荏原哲夫をリクルートしたと考えられます。
会津屋小高入りして程なく、荏原哲夫は1949年の殺人事件により、服役生活に入りました(*3)。服役後、会津屋小高の荏原哲夫は札幌市内における「パチンコ店の景品買い利権」の大半を握るなど、存在感を増しました(*3)。「パチンコ店の景品買い」を資金獲得源にしていたことから、荏原哲夫はテキヤ稼業の露店商売や興行を行っていなかったと考えられます。1956年荏原哲夫は、敵対組織の萩原一家組員達により射殺されました(*3)。翌1957年、会津屋小高は「荏原哲夫の筆頭舎弟」だった長岡宗一を「小高龍湖の実子分」として迎え入れました(*8)。
会津屋小高入り後、長岡宗一は自身の組織を札幌市で拡張させていきました(*8)。1961年頃には、長岡宗一の組織は約400人の組員を擁しました(*8)。長岡宗一は後に会津屋小高から脱退、小高龍湖に対し「逆縁状」を出しました(*9)。逆縁とは「逆破門」のことで、子分が親分を「破門」にするという意味です(*9)。長岡宗一は会津屋小高脱退後、自身の組織と他組織を合併し、北海道同志会を結成しました(*8)。1962年北海道同志会は山口組2次団体・柳川組の傘下に入りました(*8)。長岡宗一の組織が会津屋小高を脱退したのは1961~1962年の間だったことが分かります。
1963年寺田富彦が会津屋小高三代目を継承しました(*5)。寺田富彦もまた「荏原哲夫の舎弟」でした(*1)。小高龍湖は「日本アマチュアボクシング連盟副会長」等を務めたことがあり、「アマチュアボクシング界の大御所」の一面も持っていました(*5)。ヤクザ組織がボクシング業界に影響を及ぼしていたことが垣間見られます。
＜引用・参考文献＞
*1 『親分 実録日本俠客伝①』（猪野健治、2000年、双葉文庫）, p81-89
*2 『SANWA MOOK ウラ社会読本シリーズ⑤ 極東会大解剖 「強さ」を支えるのは流した血と汗の結晶だ！』（実話時代編集部編、2003年、三和出版）, p84-85
*3 『実話時代』2016年10月号, p109-111
*4 『洋泉社MOOK・義理回状とヤクザの世界』（有限会社創雄社実話時代編集部編、2001年、洋泉社）, p52
*5 『洋泉社MOOK・義理回状とヤクザの世界』, p90-92
*6 『任俠 実録日本俠客伝②』（猪野健治、2000年、双葉文庫）, p39
*7 『現代ヤクザ大事典』（実話時代編集部編、2007年、洋泉社）, p30
*8 『現代ヤクザ大事典』, p217
*9 『現代ヤクザ大事典』, p79
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