ジギリと報奨金

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 ヤクザ組織の構成員は、「組織活動」として犯罪(例:抗争中の敵対組織の構成員殺害)を行います。「組織活動」として犯罪を行った結果、刑に服した構成員の行動は「ジギリ」と呼ばれます(*1)。ヤクザ組織の力の源泉は「暴力装置」です。暴力装置の1つは「暴力行使をためらわない構成員」です。一般社会は暴力行使に怯え、ヤクザ組織に「遠慮」します。

 暴力を行使した構成員により、ヤクザ組織は「暴力的組織」であることが証明されてきました。ヤクザ業界において「ジギリ」は名誉的な意味を持っています。ジギリの構成員に対し、ヤクザ組織は弁護士を用意し、服役中の経済的な支援(差し入れ、家族の生活費支給)を行います(*1)。

 出所後、報奨金が出る場合もあります(*1)。福岡県警において長年ヤクザ組織の取締りをしてきた藪正孝氏が見た報奨金の最高額は約6千万円でした(*1)。ヤクザ業界の報奨金額において、6千万円は高額に該当すると考えられます。約6千万円の報奨金は、長期刑に服した構成員に与えられたと考えられます。

 仮に約6千万円の報奨金をもらった構成員が15年の懲役刑に服し、15年の社会不在を余儀なくされたとしましょう。「報奨金6千万円」を「社会不在期間15年」で割ると、400万円(1年)です。

 例えば「資金獲得に長け年収400万円以上を稼げる構成員」にとって、「報奨金6千万円の社会不在期間15年」のジギリは収支に合いません。ヤクザ組織にとっても、資金獲得に長けた構成員の長期社会不在は、経済的に損失です。

 以上から、資金獲得に長けた構成員は、ジギリから外されていると考えられます。

<引用・参考文献>

*1 『県警VS暴力団 刑事が見たヤクザの真実』(藪正孝、2020年、文春新書), p221-222

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