ヤクザ組織はスポーツの中でも、ボクシングと深い関わりを持っていました。ヤクザ組織は暴力装置を「力の源」にすることで、資金を獲得しています。格闘技を得意とする者は、ヤクザ組織から勧誘されやすいです。ボクシング経験者から組員になることは多いようです (*1)。
過去にはヤクザ組織がボクシングビジネスに関与していました。ボクシングの興行(試合開催)には、「売り興行」「手打ち興行」の2種類がありました(*2)。両者とも、興行主はボクシングジムでした(*2)。売り興行では、ボクシングジムが大手広告代理店等に「興行の権利」を売却しました(*2)。大手広告代理店は営業力を活かし、会場に客を沢山集めました(*2)。
大規模な興行では、客を沢山集めなければ、興行の利益が出ません。ボクシングジムは集客を苦手としており、大手広告代理店に「集客の業務」を外注していました。売り興行とは、「大規模な興行」(例えば会場は両国国技館)を意味していました(*2)。
一方、手打ち興行では、ボクシングジムが興行主として、自ら集客をしていました(*2)。手打ち興行とは、「中小規模な興行」(例えば会場は後楽園ホール)であることを意味していました(*2)。手打ち興行では、ボクシングジムが集客、つまりチケット販売を行わなければなりません。手打ち興行において、チケットの売れ残りの問題が発生しました(*3)。
ボクシングジムはヤクザ組織に「一定数のチケット」を買ってもらうことで、チケット売れ残りの問題を解決していました(*3)。東京では住吉会の2次団体・小林会が「チケットの買い取り役」として知られていました(*3)。ヤクザ組織はチケットを他者に、買値より高く売却し、利益を得ていたと考えられます(*3)。小林会は銀座を拠点にしており(*3)、チケットを買ってくれそうな金持ちを見つけるのは容易だったと考えられます。
<引用・参考文献>
*1 『教養としてのヤクザ』(溝口敦+鈴木智彦、2019年、小学館新書), p82-83
*2 『大阪府警暴力団担当刑事 ― 捜査秘録を開封する』(森功、2015年、講談社+α文庫), p150
*3 『大阪府警暴力団担当刑事 ― 捜査秘録を開封する』, p152-154
コメント