トカレフとマカロフ

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 日本の裏社会で流通した自動拳銃として、主にトカレフとマカロフが有名でした(*1)。両方とも旧ソ連(現在のロシア)で発明され、旧ソ連軍で用いられた銃でした(*1)。

 トカレフに関しては、旧ソ連の技術者はブローニングやコルトを模倣しました(*2)。後にトカレフは1951年以降中国軍の制式銃として用いられ、また中国でライセンス生産されました(*2)。

 日本で流通したトカレフは、主に中国製でした(*1) (*3)。しかし中国製トカレフの命中精度は低かったです(*3)。加えてトカレフは「ロシア規格の弾」のみ対応しており*1)、つまり他拳銃の弾を使えなかった為、トカレフは不便な自動拳銃でした。裏社会におけるトカレフの価格帯は20~30万円でした(*3)。

 上海、香港、台湾における裏社会の組織が主に、中国製トカレフを日本に密輸していたとされています(*4)。1988~1989年に中国最大手の兵器企業「北方工業公司」広州支部からトカレフ2,300丁が紛失する事件が起きました(*2)。北方工業公司から紛失したトカレフは台湾の貿易商を通じて日本に密輸されていました(*2)。密輸先は交和会の幹部でした (*2) 。交和会は1994年まで関東を拠点に活動した1次団体で、1994年稲川会の傘下に入りました(*5)。台湾の貿易商のバックには、台湾の裏社会の組織が控えていたと考えられます。

 トカレフに比し、マカロフの品質は良いと評判で、マカロフの価格帯は50万円以上でした(*3)。裏社会においても商品の品質によって、価格帯が異なってくることが分かります。マカロフも中国軍で正式に採用された拳銃でした(*6)。

 1995年6月銃刀法の改正により「発射罪」が施行されました(*7)。建物への発射(いわゆる「ガラス割り」)に関しては従来、刑の量定は1~2年の懲役刑でした(*7)。しかし発射罪の施行以降、建物への発射においても、刑の量定が重くなりました(*7)。

<引用・参考文献>

*1 『塀の中の元極道 YouTuberが明かす ヤクザの裏知識』(懲役太郎、2020年、宝島社), p27-29

*2 『中国「黒社会」の掟-チャイナマフィア』(溝口敦、2006年、講談社+α文庫), p154

*3 『裏社会 噂の真相』(中野ジロー、2012年、彩図社), p193

*4 『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版), p129

*5 『洋泉社MOOK・勃発!関東ヤクザ戦争』(有限会社創雄社『実話時代』田中博昭編、2002年、洋泉社), p38-39

*6 『歌舞伎町・ヤバさの真相』(溝口敦、2009年、文春新書), p236

*7 『ヤクザ・レポート』(山平重樹、2002年、ちくま文庫),p35

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