シデルノ・グループ

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 カナダの大都市・トロント(オンタリオ州)を拠点に活動するアウトロー組織に、シデルノ・グループ(Siderno Group)がいます(*1)。シデルノ・グループは独立組織ではなく、ンドランゲタ(Ndrangheta)の下部団体です(*2)。

 ンドランゲタはイタリアのレッジョ・カラブリア(カラブリア州)を本拠地とするアウトロー組織です(*1)。カラブリア州はイタリアの最南端に位置し、メッシーナ海峡を挟んでシチリア島と向かい合っています。

 ヨーロッパに流通するコカインの80%はレッジョ・カラブリアの港から密輸されていると、イタリアの役人達は見ています(*3)。ンドランゲタは政治家を買収することに長けており、地元の政界にも力を及ぼしていました (*3)。「レッジョ・カラブリアの港の支配権」が行政ではなく、ンドランゲタにあることが窺い知れます。

 ンドランゲタの活動領域は広く、世界中で活動しています(*1)。シチリア系アウトロー組織のマフィアに比べ、資金獲得活動面において、ンドランゲタの構成員の裁量権は広いです(*1)。しかしながら構成員には「上納金の提供義務」が課せられています(*1)。またマフィアとの違いのもう1つとして、女性の構成員が挙げられます(*1)。女性の構成員は「恐喝」のような資金獲得活動において、重要な役割を果たしていると考えられています(*1)。

 ンドランゲタは資金獲得活動においてカナダを重要視してきました (*1)。背景には、カナダの銀行システムの秘密主義により、資金洗浄が容易だったことが考えられています(*1)。ンドランゲタは麻薬密輸ビジネスの収益を資金洗浄する必要がありました(*1)。トロントはカナダの金融センターです。シデルノ・グループの役割は、トロントにおける資金洗浄、麻薬の密輸ビジネスでした(*1) (*3)。シデルノ・グループにおける麻薬の密輸ビジネスは、海外からカナダに密輸された麻薬をアメリカ等の麻薬市場に「再輸出」することで収益を得ていました(*4)。

 シデルノ・グループの設立者はコジモ・スタルッテリでした(*5)。スタルッテリは1952年、トロントに移住しました(*5)。シデルノ・グループは1952年以降に設立されたと考えられます。シデルノ・グループは、オンタリオ州で活動するンドランゲタ10団体から構成されています(*5)。スタルッテリは定期的にイタリアに戻っていました(*5)。ンドランゲタの本部と密に連絡を取り合っていたことが窺い知れます。スタルッテリは長年シデルノ・グループの首領をつとめ、2011年86歳で死去しました(*5)。2011年時点で86歳であったことから、トロントに移住した1952年時、スタルッテリの年齢は27歳であったことが分かります。

<引用・参考文献>

*1 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』(GERG THOMPSON、2014年、CreateSpace Independent Publishing Platform), p63-66

*2 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』, p76

*3 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』, p67-69

*4 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』, p78

*5 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』, p70-73

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