循環取引による資金調達

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 企業の資金調達の1つとして「循環取引」を利用したものがあります。循環取引とは、複数企業が示し合わせた上で商品を転売し、「架空の売上」を計上する取引手法です(*1)。循環取引では文字通り、商品が企業間を行き来するだけで消費者に届くことはありません(*1)。

 また循環取引では「最初に商品販売した企業」が最終的に買い戻します(*1)。つまり最初に販売した企業に商品が戻ってきます。ゆえに商品は移動することなく、最初に販売した企業の倉庫に置かれたままです(*1)。

 例えばA、B、Cの3社が循環取引に取り組んだとします。A社が「最初に商品販売する企業」で、商品X(100個)を100万円でB社に販売します。B社は商品X(100個)を110万円でC社に転売します。C社は商品X(100個)を120万円でA社に転売します(A社からすれば「買い戻し」)。3社の利益または損失を見てみると、A社20万円の損失(100万円-120万円)、B社10万円の利益(110万円-100万円)、C社10万円の利益(120万円-110万円)となります。循環取引では、「最初に商品販売する企業」が損失し、残りの企業が利益を得ることが分かります。

 「最初に商品販売する企業」が損失承知の上で循環取引に取り組む理由の1つとしては、資金調達があります(*1)。例の場合、A社は「100万円借入」の目的で循環取引を仕掛けたのです。債権者はB、C社になります。商品Xが担保となり、商品Xの移動とともに、債権者も移動します(*1)。B、C社間の取引においてB社が「A社の債権」をC社に110万円で売ったという見方もできます。

 借入(資金調達)目的の観点からすると、A社の借入金(元金)は100万円、返済金は120万になります。A社の支払利息は20%(年利)となります。

  循環取引は日本では古くから行われている商取引手法ですが、企業の粉飾決算に利用されるとこもあり、問題視されています(*1)。

<引用・参考文献>

*1 『FACTA』2020年4月号「会計スキャン IT業界に蔓延する循環取引の闇」(細野祐二), p54-57

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