覚醒剤元売りの販売方法

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 1971年時の大阪で「覚醒剤元売り」として活発的に活動していたのが、金相泰グループ(金相泰をトップとする密売組織)でした(*1)。金相泰グループは、韓国から覚醒剤を仕入れていました(*1)。金相泰グループから国際電話で注文を受けた韓国の製造組織は、日本行きの貨物船に覚醒剤を隠した上で、船員に「持ち運び役」をさせていました(*1)。韓国の製造組織は、覚醒剤を1g当たり600円で金相泰グループに販売していました(*1)。

 金相泰グループ(元売り)は「仲卸し」に1g当たり1万1,000~3,000円で販売しました(*1)。金相泰グループ(元売り)の利益は1g 当たり1万400円~1万2,400円になります。一般的に、覚醒剤元売りの仕入れ価格は1g当たり約1,000円で、仲卸しへの販売価格は1g当たり4,000~5,000円でした(*2)。元売りの利益は1g 当たり3,000~4,000円になります。金相泰グループは利幅を大きくとっていたことが分かります。

 金相泰グループは「仲卸し」に100g単位で販売していました(*1)。金相泰グループの「販売所」は大阪市内のあるホテルでした(*1)。金相泰グループは部屋を複数借りていました(*1)。商談部屋(A部屋)において金相泰グループは「仲卸し」から先に金を受け取りました(*1)。金相泰グループの者は商談部屋(A部屋)を出て、金相泰の待機部屋(B部屋)に金を持っていきました(*1)。その後、金相泰グループの者は、覚醒剤の保管部屋(C部屋)に覚醒剤を取りにいき、「仲卸し」の待機する商談部屋(A部屋)に戻り覚醒剤を渡しました(*1)。金相泰グループによる販売方法は、金と覚醒剤の受け渡しに「時間差」を設けていたことが分かります。時間差を設けることで、「仲卸し」による覚醒剤の強奪リスクを避けることができます。「売上金」(B部屋)と「商品(覚醒剤)」(C部屋)の保管場所を分けていたことも、他組織からの襲撃や警察組織の手入れに備えたことだったと考えられます。

 「仲卸し」は「小売り」に覚醒剤1g当たり1万6,000~8,000円で販売しました(*1)。「仲卸し」の利益は1g当たり 3,000~7,000円になります。

 「小売り」は「末端売人」に1g当たり2万円で販売しました(*1)。「小売り」の利益は1g当たり 2,000~4,000円になります。

 「末端売人」は客に0.1g当たり1万円(1gに直すと10万円)で販売しました(*1)。「末端売人」の利益は1g当たり8万円になりました。「末端売人」の利幅が大きい要因としては、摘発リスクの高さが考えられます。

<引用・参考文献>

*1 『浪花のシャブ外道 密売人が見た薬物地獄絵図』(木佐貫真照、2020年、徳間書店),p35-39

*2 『裏経済パクリの手口99』(日名子暁、1995年、かんき出版), p120-121

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