オピオイド系鎮痛剤からヘロインの移行

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 2000年代以降のアメリカでは「オピオイド系鎮痛剤の過剰摂取」を原因とする死亡者数が増加していきました (*1)。アメリカの外来診療ではオピオイド系鎮痛剤は「鎮痛目的」として処方されてきました(*1)。反面、オピオイド系鎮痛剤のデメリットとして、常習性の高さが挙げられました(*2)。結果依存症者が増え、過剰摂取による死亡者も増加したと考えられます。オピオイドとは化合物の一つで、ケシ(植物)などから採取されたアルカロイド(中枢神経抑制作用)を含んでいます(*2)。

 日本でもオピオイド系鎮痛剤は医療の領域で用いられてきました(*3)。しかし日本政府はオピオイド系鎮痛剤の使用には、厳しい規制をかけています(*3)。日本においてオピオイド系鎮痛剤は「一般医薬品」「第二種向精神薬」「医療用麻薬」の3つに収められています(*3)。オピオイド系鎮痛剤の有名医薬品である「モルヒネ」「オキシコドン」「オキシコンチン」「フェンタニル」等は「医療用麻薬」に該当します(*3)。日本において医療用麻薬を処方できるのは、「麻薬施用者免許」取得の医師に限られています(*3)。麻薬施用者免許は毎年更新が必要です(*1)。結果、日本の開業医の多くは麻薬施用者免許を持たず、医療用麻薬のオピオイド系鎮痛剤を処方できません(*3)。ゆえに日本ではオピオイド系鎮痛剤の流通量が少ないです。医療用麻薬の不法所持等は「麻薬及び向精神薬取締法」違反になり、摘発対象になります(*3)。

 アメリカにおけるオピオイド系鎮痛剤依存症を巡る問題点の1つとして、摂取薬物が「オピオイド系鎮痛剤」から「ヘロイン」に移行することが挙げられます(*4)。へロインはアメリカにおいても違法薬物で、オピオイド系鎮痛剤同様、植物ケシを原料とします。ヘロインは19世紀後半から「咳止めの医薬品」として合法的に販売されていました(*5)。しかし次第にヘロイン依存症者が増加したことから、アメリカ政府は1914年制定の「ハリソン麻薬法」にて、ヘロイン等の麻薬の販売と所持に対し厳しい制限を科しました(*5)。1924年までにはヘロインの製造も禁止されました(*5)。アメリカでは1924年までにヘロインは「違法薬物」となったのでした。

 ヘロインの場合、製造から小売市場までの全流通経路が「違法領域の住人」によって担われています。ヘロインビジネスに係わる経済主体は全て「違法領域の住人」である為、ヘロインの安全性は法的には担保されていません。ヘロインは「医師の処方箋」なく入手可能です。オピオイド系鎮痛剤の処方を拒否された依存症者が最終的にヘロインを摂取するようになったケースもあります(*4)。またより高い薬効を求め、ヘロインに至る場合もいました(*4)。2010年代のアメリカにおいてヘロイン1回使用分は「約0.1g」とされていました(*6)。

<引用・参考文献>

*1 『日刊ゲンダイ』2022年1月21日号(20日発行)「米眼科学会が「麻薬使用に関するベストプラクティス」を話題にした理由」, p13

*2 『週刊エコノミスト』2017年9月5日号「死亡者や依存症相次ぐオピオイド 米国の貧困層や子供の被害が拡大」(土方細秩子), p86-87

*3 『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』(ベス・メイシー著、神保哲生訳、2020年、光文社), p472-475

*4 『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』, p21,23,279

*5 『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』, p39-42

*6 『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』, p223

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