ドラッグ・スーパーマーケット

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 1990年代のニュージーランドでは「ドラッグ・スーパーマーケット」(drug supermarkets)と呼ばれる違法薬物(主にマリファナ)の販売拠点が流行りました(*1)。ドラッグ・スーパーマーケットの別名は「ティニー・ハウス」(Tinnie houses)でした(*1)。ニュージーランドにおいて「ティニー」(Tinnie)とは「銀紙に包まれたマリファナ」を意味しました(*1)。

 アウトロー組織は主に郊外の住宅を「ティニー・ハウス」、つまり違法薬物の販売所としました(*1)。ティニー・ハウスは末端取引(小売り)の売場であり、商品(違法薬物)の受け渡しは主に「窓越し」で行われていました(*1)。バイカーギャング「ハイウェイ61」(Highway61)(*2)の1支部は1990年代初期、ハットバレー(ウェリントン広域自治体)のティニー・ハウスを一軒経営していました(*1)。そのティニー・ハウスでは、フェンスに小さい穴があり、その穴で「商品の受け渡し」及び「代金の受け渡し」が行われていました(*1)。

 ストリートギャングの「ブラック・パワー」(Black Power)はマヌカウ郡(Counties Manukau)全域に点在していたティニー・ハウスの大半を支配していました(*3)。

 ティニー・ハウスは「ドラッグ・スーパーマーケット」という別名を持つものの、日本のスーパーマーケットのようにセルフサービス方式(客自身が商品を選んで購入する)ではなく、対面販売方式を採っていたことが推測されます。

 ティニー・ハウスつまり「店舗型」の販売方法はニュージーランド中に広まりました(*1)。24時間営業のティニー・ハウスも多かったです(*1)。当時ティニー・ハウスは多額の収益をアウトロー組織にもたらしました(*1)。

 1990年代にはアメリカのアトランタ市でも「店舗型」違法薬物の販売方法が見られました(*4)。アトランタ市における違法薬物の販売拠点は「トラップ」(Trap)と呼ばれていました(*4)。

 ニュージーランドでは2018年11月から、全国規模で「薬物使用量」調査目的の廃水検査が毎月1週間の頻度で実施されています(*5)。廃水から検出された薬物のバイオマーカーの濃度から、薬物使用量は算出されています(*5)。検査対象薬物はメタンフェタミン(覚醒剤の一種)、MDMA、コカイン、ヘロイン、フェンタニルの5つです(*5)。マリファナ等の大麻類は検査から外されていることが分かります。

<引用・参考文献>

*1 『Patched: The History of Gangs in New Zealand』(Jarrod Gilbert,2021,Auckland University Press), p187-188

*2 『Patched: The History of Gangs in New Zealand』, p88

*3 『Gangland: New Zealand’s Underworld of Organised Crime』(Jared Savage,2020, HarperCollinsPublishers), p198

*4 『TRAP  HISTORY:ATLANTA  CULTURE  AND THE GLOBAL IMPACT OF TRAP MUSIC』(A.R.SHAW,2020,Bluefield Media, LLC), p23-24

*5 ニュージーランド警察サイト

「ニュージーランド 廃水薬物検査・全国の概要-2021年第4四半期調査結果」(英語表記:Wastewater Drug Testing in New Zealand: National Overview Quarter Four 2021)

https://www.police.govt.nz/sites/default/files/publications/wastewater-results-quarter-4-2021.pdf

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