ドミナント戦略とヤクザ組織

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 特定地域に同一店舗を集中的に展開することを経営学の世界では「ドミナント戦略」と呼びます(*1)。ドミナント戦略で功を奏した典型が大手コンビニのセブン-イレブンです(*2)。コンビニにおける集中出店の長所の1つとして「商品配送効率の高い」があります(*3)。

 コンビニは小規模店舗という性格上、1店舗に対する配送量は少ないです(*4)。ゆえに商品配送トラックは複数店舗を回る必要があります。当然「店舗間距離」が長いと、移動距離は長くなる為、配送効率が悪くなります。逆に「店舗間距離」が短いと、移動距離は短くなる為、配送効率が良くなります。

 ドミナント戦略に成功した企業は、特定地域の需要を独占でき、結果的に他企業の進出を防ぐことができます(*1)。

 ヤクザ組織の縄張りにおいても「ドミナント戦略」に似た事例があります。日本では同一組織(1次団体)が特定地域に集中的に活動してきた事例があります。

 2019年頃の広島県では共政会、浅野組、俠道会の3団体のみが活動していました(*5)。広島市では共政会、福山市では浅野組、尾道市では俠道会がほぼ独占していたと考えられています。つまり3団体は各都市でドミナント戦略に成功していたと考えられます。

 2017年時点の沖縄県では旭琉會のみが活動していました(*6)。つまり沖縄県の最大人口都市の那覇市では旭琉會がドミナント戦略に成功していたと考えられます。また福岡県の北九州市では長年工藤會が独占しており、工藤會が北九州市ではドミナント戦略に成功していたと考えられます。

 上記5団体は、山口組のように武力抗争を厭わず他地域に進出するという「覇権主義」をとっていませんでした(俠道会と工藤會は広域に活動していたものの、「覇権主義」とはいえないと考えられます)。

 ちなみに2021年時点における各都市人口は、以下となっています(*7)。

・広島市:約117.4万人

・福山市:約45.6万人

・尾道市:約13.1万人

・北九州市:約93.1万人

・那覇市:約31.5万人

<引用・参考文献>

*1 『この一冊で全部わかる ビジネスモデル 基本・成功パターン・作り方が一気に学べる』(根来龍之・富樫佳織・足代訓史、2021年、SBクリエイティブ), p278

*2 『この一冊で全部わかる ビジネスモデル 基本・成功パターン・作り方が一気に学べる』, p280

*3 『地理学で読み解く流通と消費』(土屋純、2022年、ベレ出版), p151

*4 『地理学で読み解く流通と消費』, p154

*5 『実話時代』2019年2月号, p29

*6 『実話時代』2019年2月号, p33

*7 『データブック オブ・ザ・ワールド 2022年版 -世界各国要覧と最新統計-』(二宮書店編集部、2022年、二宮書店), p52-53

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