ブラジルの有名なアウトロー組織として「首都第一コマンド」(Primeiro Comando da Capital)がいました(*1)。首都第一コマンドは銀行強盗、自動車襲撃、誘拐(身代金目的)等を資金獲得源とする一方で、違法薬物ビジネスも主要な資金獲得源としていました(*1)。首都第一コマンドは1993年結成されました(*1)。2000年代後半ブラジルの大都市サンパウロにおいて首都第一コマンドは最も強いアウトロー組織でした(*1)。
ブラジルでは「レッド・コマンド」(O Comando Vermelho)というアウトロー組織も知られていました(*2)。ブラジルのもう一つの大都市・リオデジャネイロ(リオデジャネイロ州の州都)では2000年代後半レッド・コマンドが最大で最強のアウトロー組織でした(*1)。
リオデジャネイロにおける違法薬物流通は、主に3段階に分けらました(*1)。川中にあたるのが「第1段階」、川中と川下の間に位置するのが「第2段階」、川下が「第3段階」になりました。
図 リオデジャネイロの地図(出典:Googleマップ)
第1段階では「アタカディスタ」(atacadistas)、「マトス」(matutos)というプレーヤーが活動しました(*1)。アタカディスタ(日本語訳は「卸売業者」)は、近隣諸国からブラジルにコカインや武器を密輸入する際の調整業務をしました(*1)。一方マトスはアタカディスタから密輸品を仕入れ、ファヴェーラ(スラム街)のギャングに卸しました(*1)。つまりアタカディスタが「元売り」、マトスが「卸売り」の役割を果たしていました。アタカディスタ、マトスを担う者達は、特定のアウトロー組織には属していませでした(*1)。
第2段階では「ドーノス」(donos)というプレーヤーが活動しました(*1)。ドーノスは「ギャングのトップ」を現す言葉でした(*1)。先述のマトスは、実際はファヴェーラのギャングのドーノス(トップ)に密輸品を卸していました(*1)。第2段階において違法薬物はアウトロー組織の手に渡っていたのでした。
川下の第3段階では、ドーノス配下の者達が「小売部門」として活動しました(*1)。ギャング内では小売業務が細分化されていました(*1)。小売部門の責任者としてゼネラル・マネージャー職(gerente geral)があり、全ての業務を監督し、人事配置等もしていました(*1)。ゼネラル・マネージャー職の下にはアシスタント・マネージャー職(sub-gerentes)が置かれていました(*1)。アシスタント・マネージャー職は主に「コカイン担当者」「マリファナ担当者」「戦闘部隊担当者」の3つに分けられていました(*1)。アシスタント・マネージャー職の職務内容から、リオデジャネイロのファヴェーラでは主にコカイン、マリファナが流通していたことが推測されます。
また各販売地点のマネージャー職(gerente de boca)もいました(*1)。各販売地点のマネージャー職は「営業支店長」のような位置づけだったと推測されます。売人(vapor)、戦闘部隊員(soldados)、見張り役(Olheiros/fogueteiros)、包装役(endolador)等が実務を担っていました(*1)。売人(vapor)は販売地点に立って、客に違法薬物を販売しました(*1)。包装役(endolador)は、違法薬物を販売用に包装する業務をしていました(*1)。
<引用・参考文献>
*1 『Encyclopedia of Gangs』「Brazilian Gangs」(André Sales Batista and Marcos David Burgos,2008,Greenwood Press), p18-19
*2 『Encyclopedia of Gangs』「Brazilian Gangs」, p15
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