裏社会における物々交換

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 2000年代ニューヨーク市のアルバニア系組織は、違法薬物の調達時、多額の現金での決済、もしくは他の違法薬物と交換(物々交換、バーター取引)をしていました(*1)。貨幣のような媒介機能を果たす商品(穀物など)は「商品貨幣」と呼ばれます(*2)。つまりアルバニア系組織と取引先の組織にとって違法薬物は「商品貨幣」だったのです。背景には違法薬物の換金性の高さが考えられます。また違法薬物はかさばらず、可搬性の高い商品です(*3)。違法薬物の「受け渡しやすさ」も「商品貨幣」に該当した一因と考えられます。

 過去には物々交換から生まれた「通貨単位」がありました。17世紀後半から19世紀後半の北米では先住民族とヨーロッパ側との間で毛皮交易が行われていました(*4)。先住民族が毛皮を供給していましたが、貨幣制度を持っていませんでした(*5)。毛皮交易の決済手段は物々交換でした(*5)。ヨーロッパ側組織の1つである「ハドソン湾会社」(1670年設立)(*4)の領土内では「メイド・ビーヴァー」(Made Beaver:略してMB)という通貨単位が用いられていました(*5)。1MBは「最高級の冬毛ビーヴァーの毛皮1枚」を意味していました(*5)。

<引用・参考文献>

*1 『Decoding Albanian Organized Crime Culture,Politics,and Globalization』(Jana Arsovska,2015, University of California Press), p107

*2 『貨幣システムの世界史』(黒田明伸、2021年、岩波現代文庫), p6

*3 『FOR BEGINNERS シリーズ マフィア』(安田雅企、1994年、現代書館), p92

*4 『毛皮交易が創る世界 ハドソン湾からユーラシアへ』(木村和男、2004年、岩波書店), p1-4

*5 『毛皮交易が創る世界 ハドソン湾からユーラシアへ』, p41

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