スリランカやインドネシアでも栽培されていたコカ葉

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 コカインは「中枢神経興奮」の薬理作用を持つ違法薬物です(*1)。コカインの原料はラテンアメリカ原産のコカ葉です(*2)。

 1859年ドイツで博士課程の学生アルベルト・ニーマン(Albert Niemann)が、コカ葉から「コカイン成分」を抽出するのに成功しました(*2)。コカ葉にはおよそ0.5~1.8%のコカイン成分が含まれています(*2)。

 コカ葉は、苗床の移植から2~3年後に収穫開始となる作物で、管理次第では30~40年はもつといわれています(*3)。昔からコカ葉は原産地において滋養強壮、高山病予防目的で摂取されてきました(*3)。

 1859年コカイン成分の抽出成功により、以降コカ葉とコカインの需要が高まっていきました(*2)。

 しかしコカ葉は長期間の保存に適しておらず、原産のアメリカ大陸からヨーロッパへの輸送中に、しばしば腐りました(*2)。コカ葉は遠距離輸送に向いていなかったのです。しかしコカイン・ベースの発明で状況は大きく変わりました。

 ペルーのある化学者がコカイン・ベース(cocaine base)を発明したのです(*2)。コカイン・ベース約1kgは、コカ葉約100kgに相当しました(*2)。つまりコカ葉をコカイン・ベースに変換することで重量は減少し、結果輸送コストが下がりました(*2)。

 またコカイン・ベースは「コカ葉」と「コカイン」の中間物であり(*2)、保存にも適していたのでしょう。以降アメリカ大陸からコカイン・ベースがヨーロッパに送られました(*2)。コカイン生産量は増加していきました(*2)。

 大国はコカインの収益性に目をつけ、植民地でのコカ葉栽培を図りました(*2)。

 イギリスの植民地においてはインドやスリランカでコカ葉栽培が盛んに行われました(*2)。スリランカでは1870年にコカ葉が持ち込まれ、1880年代にコカ葉栽培が拡大しました(*2)。

  オランダの植民地においてはインドネシアでコカ葉栽培が盛んに行われました(*2)。当時オランダではNCF(Nederlandsche Cocaïne Fabriek)がコカインを製造していました(*2)。

 日本では1917年星製薬が、ペルーのワヤガ川上流地域にある土地(225平方マイル)を購入しました(*2)。星製薬はその土地でコカ葉を含む熱帯植物を育てました(*2)。星製薬はコカイン製造に取り組んでいたのです(*2)。

 ちなみにコカ葉は飲料にも用いられていました。ヨーロッパではかつて「コカワイン」が流行りました(*4)。コカワインとは、ボルドーワインにコカの葉を加えたものでした(*4)。また清涼飲料水のコカ・コーラ(1886年販売開始)には1903年までコカインが含まれていました(*4)。

<引用・参考文献>

*1『薬物依存症』(松本俊彦、2018年、ちくま新書),p33-34

*2 InSight Crimeサイト「From Empires to World Wars – A History of the Global Cocaine Trade」(Douwe Den Held, Alessandro Ford, and Chris Dalby,2022年9月1日)

https://insightcrime.org/news/empires-world-wars-history-global-cocaine-trade

*3『エリア・スタディーズ54  ボリビアを知るための73章 【第2版】』「コカとアンデス高地農民の生活」(国本伊代、2013年、明石書店),p191-192

*4 『<麻薬>のすべて』(船山信次、2019年、講談社現代新書),p104-105

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