フィンランドとバイカーギャング

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 北欧のフィンランドではバイカーギャングが存在感を増してきています (*1)。フィンランドでは覚醒剤やMDMAが蔓延しています(*1)。フィンランドのバイカーギャングは覚醒剤やMDMAの密売に関与しています(*1)。

 現在ヨーロッパでは主にアンフェタミン(amphetamine)、メタンフェタミン(methamphetamine)、合成カチノン(synthetic cathinones)の3つが「覚醒剤」として流通しています(*2)。昔からヨーロッパの覚醒剤市場ではアンフェタミンが最も広く流通していました(*2)。ヨーロッパのほとんどの国では、メタンフェタミンや合成カチノンの入手は困難でした(*2)。しかし最近は合成カチノンが広く流通するようになっています(*2)。

 『欧州薬物報告(European Drug Report)2022』によれば、2020年(もしくは2022年付近の年)のフィンランドでは、覚醒剤(アンフェタミン+メタンフェタミン)の押収量は262kg、押収件数は2,316件でした(*3)。同時期のフィンランドでは、ヘロインの押収量は1kg未満、押収件数は28件でした(*3)。またコカインの押収量は52kg、押収件数は334件でした(*3)。押収量と押収件数から、フィンランドではヘロインやコカインに比し、覚醒剤が多く流通していたことが考えられます。

 フィンランドの地元バイカーギャング「キャノンボール」(Cannonball)は同国で最大勢力を誇っていたといわれています(*4)。キャノンボールはフィンランド国内に6つの支部を擁していました(*4)。

 フィンランド国外のバイカーギャングもフィンランドで活動しています。2023年11月時点でアメリカ合衆国系「アウトローズ」(Outlaws)はフィンランドに4支部を持ち(*5)、同じくアメリカ合衆国系「バンディドス」(Bandidos)はフィンランドに14支部を持っています(*6)。またアメリカ合衆国系「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s Angels)もフィンランドで活動しています(*7)。ヘルズ・エンジェルスは1996年フィンランドに初めて支部を設けました(*7)。

 フィンランドは1995年欧州連合(EU)に加盟、1999年通貨ユーロを導入しました(*8)。またフィンランドは1996年シェンゲン協定に署名しました(*9)。シェンゲン協定では「EU加盟国間の出入国審査」が廃止されます(*10)。フィンランドは1996年に署名した後、2001年に出入国審査を廃止しました(*9)。

 つまりフィンランドと「シェンゲン協定加盟済みのEU加盟国」との往来では、出入国審査がないのです。

 フィンランドが陸地で接している国としては、ノルウェー、スウェーデン、ロシアの3カ国があります。ノルウェー、スウェーデンの2カ国は「シェンゲン協定加盟済みのEU加盟国」です(*11)。

 ノルウェー、スウェーデンからは出入国審査なしで陸路にてフィンランドに入ることができます。ノルウェー、スウェーデン国境地帯の多くは北極圏です。具体的にはラッピ県(フィンランド最北の県)がノルウェー、スウェーデンに接しています。

 ラッピ県経由の陸路以外で、他国(ロシアを除く)からフィンランドに行くには、空路もしくは海路しかありません。

 エストニアは、フィンランドと陸続きではないですが、地理的に近いです。エストニアはバルト三国の1つで、三国の中で一番北に位置しています。「フィンランドのヘルシンキ」から「エストニアのタリン」までの所要時間は、夏は高速船で1時間半、冬は大型フェリーで2時間です(*12)。ヘルシンキ、タリンともに首都です。

 アメリカ合衆国のCFAHサイト「2023年 大麻(CANNABIS)グローバル・プライス・インデックス」では、世界140都市の大麻価格(1g)等が載っています(*13)。ヘルシンキ、タリンの大麻(1g)価格も記載されています。ヘルシンキの大麻価格(1g)は19.7米ドル、タリンの大麻価格(1g)は22.1米ドルです(*13)。

 エストニアは2004年EUに加盟しました(*14)。また2011年にエストニアは通貨ユーロを導入しました(*15)。

 EU加盟(2004年)前のエストニアでは物価が安かったです(*16)。フィンランドでは酒類の税率が高く、フィンランドの人々は船でエストニアまで行き、酒を購入していました(*16)。酒に関しては、フィンランドの方が高く、エストニアが安いという関係でした。

 一方、2023年の大麻(1g)に関しては、フィンランドの人々にとって、タリンで買うよりも、ヘルシンキで買った方が安いことが分かります。

 陸路においてヘルシンキから近い海外の大都市は、ロシアのサンクトペテルブルクになります。両都市の間には高速鉄道が2010年から開通しており、3時間30分で移動できます(*17)。

<引用・参考文献>

*1 グローバル・オーガナイズド・クライム・インデックスのサイト「フィンランド」

https://ocindex.net/country/finland

*2『覚醒剤-ヨーロッパの現状  欧州薬物報告(European Drug Report)2023』(薬物及び薬物依存症の欧州監視センター,2023),p1

https://www.emcdda.europa.eu/sites/default/files/pdf/31092_en.pdf?10133

*3『欧州薬物報告(European Drug Report)2022 動向と展開』「表A7 押収(SEIZURES)」(薬物及び薬物依存症の欧州監視センター,2022),p53

*4 『The One Percenter Encyclopedia: The World of Outlaw Motorcycle Clubs from Abyss Ghosts to Zombies Elite (English Edition)』Kindle版「Cannonball」(Bill Hayes,2018, Motorbooks)

*5 アウトローズのフィンランド勢のサイト「支部」

http://www.outlawsmc.fi/chapters.html

*6 バンディドスのヨーロッパ勢のサイト「Local Chapters」

https://bandidosmc.eu/chapterseite-germany/

*7 ヘルズ・エンジェルスのサイト「ヨーロッパ」

あわせて読みたい

*8 『物語 フィンランドの歴史』(石野裕子、2022年、中公新書),p237-238

*9 『物語 フィンランドの歴史』,p245

*10『国際情勢の見えない動きが見える本 新聞・テレビではわからない「世界の意外な事実」を読む』(田中宇、2001年、PHP文庫),p67

*11 在フィンランド日本国大使館のサイト「フィンランドの入国査証、滞在許可証」

https://www.fi.emb-japan.go.jp/itpr_ja/ryoji-tokou.html

*12『エリア・スタディーズ111  エストニアを知るための59章』「世界遺産の旧市街 いくつもの顔」(西角あかね、2012年、明石書店),p212

*13 CFAHサイト「2023年 大麻(CANNABIS)グローバル・プライス・インデックス」

https://cfah.org/cannabis-price-index/

*14 『エリア・スタディーズ111  エストニアを知るための59章』「EUとの関係 エストニア人はヨーロッパ人になったのか」(小森宏美、2012年、明石書店),p175-179

*15 『エリア・スタディーズ111  エストニアを知るための59章』「通貨の変遷 クローンからユーロへ」(小森宏美、2012年、明石書店),p207-211

*16 『物語 フィンランドの歴史』「コラム2 酒好きの国と禁酒法」(石野裕子、2022年、中公新書),p141-144

*17 JETROサイト「サンクトペテルブルクとヘルシンキ結ぶ高速列車が運行再開」

(島田憲成、2021年12月14日)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/12/3960ab45ea4d2ecd.html

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