ハイチの「G9」と「400マウォゾ」

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 カリブ海のハイチでは150以上のアウトロー組織が活動していました(*1)。その中でも目立った存在としては「G9」というアウトロー組織がありました(*1)。

 G9は、首都ポルトープランスにおける「9つの強豪アウトロー組織」からなる連合体でした(*1)。2020年6月ジミー・シェリジエ(Jimmy Chérizier)がG9を結成しました(*1)。ジミー・シェリジエは別名「バーベキュー」(Barbecue)と呼ばれ、元々警察官でした(*1)。G9は別名「G9 家族と盟友」(G9 Fanmi e Alye)とも呼ばれました(*1)。

 G9加盟組織は「連合体の一員」という威光を用い、縄張りを拡張させていきました(*1)。G9加盟組織は各々、経済的に独立していました(*1)。G9加盟組織の構成員は「他のG9加盟組織の縄張り」に入る権限を持っていました(*1)。

 G9には「デルマス・ギャング」(Delmas gang)、「バズ・クラッヘ・ディフェ・ギャング(Baz Krache Dife gang)、「バズ・ピラト・ギャング」(Baz Pilate gang)、「ナン・ティ・ブワ・ギャング」(Nan Ti Bwa gang)、「シモン・ペレズ・ギャング」(Simon Pelé’s gang)、「バズ・ナン・シャボン・ギャング」(Baz Nan Chabon gang)、「ワフ・ジェレミー・ギャング」(Waf Jérémie gang)、「ナン・ボストン・ギャング」(Nan Boston gang)、「ベレコウ・ギャング」(Belekou gang)の9組織が加盟していました(*1)。

 ジミー・シェリジエはデルマス・ギャングのトップでした(*1)。

 加盟組織の主な資金獲得源は、略奪、ミカジメ料の徴収などの「恐喝ビジネス」でした(*1)。ミカジメ料の徴収対象は、主に地元企業、露店商、交通機関の運転手でした(*1)。またG9加盟組織は身代金目的で誘拐ビジネスもしていました(*1)。さらにG9加盟組織はハイチ国内において武器を密売していたとも考えられています(*1)。

 2021年7月、不特定の武装集団がハイチのモイーズ大統領を暗殺しました(*1)。実はモイーズ大統領はG9を影で支援していたと見られていました(*1)。

 ハイチのもう1つの大きなアウトロー組織としては「400マウォゾ」(400 Mawozo)がありました(*2)。400マウォゾは2016年に結成され、2018年以降勢力を拡張させていきました(*2)。

 400マウォゾの主な資金獲得源は「誘拐ビジネス」でした(*2)。400マウォゾの誘拐は「集団誘拐」(一度に多人数を誘拐する)を特徴としていました(*2)。2021年10月ハイチにおいて、400マウォゾは17人の外国人(アメリカ人及びカナダ人)を誘拐しました(*2)。この事件で1人当たり100万ドルの身代金が払われたといわれています(*2)。

 また400マウォゾは2020年頃から、少数編制のバイカー集団を幹線道路や公共交通機関に派遣し、一般人を誘拐しました(*2)。この場合の身代金は少額でした(*2)。身代金が支払われた数日後、人質は解放されました(*2)。

 誘拐ビジネスでは、実行側は特別な知識やノウハウを持たなくとも、また他組織とのネットワークを特に有さなくても、暴力装置さえあれば遂行できます。誘拐ビジネスは「手っ取り早く稼げる方法」といえます。また誘拐ビジネスは資金回収期間が短いです。

 一方、違法薬物ビジネス(例えば小売部門)の場合、実行側には違法薬物に関する知識や販売ノウハウが求められます。小売の組織は、薬物の性質や市場動向等を把握した上で、販売量や末端価格を決めています。密売という性格上、警察組織にばれないように販売する工夫も求められます。

 他組織とのネットワークも必要です。小売の組織は、卸元の組織から違法薬物を仕入れています。ゆえに小売の組織は、卸元と「関係」を構築及び維持していかなければなりません。

 新興アウトロー組織が違法薬物の小売事業を立ち上げようとすると、上記のことを経る必要に加えて、顧客の新規開拓もしなければなりません。ゆえに「事業の立ち上げ」を起点にすると、資金回収期間は長いといえます。

 新興アウトロー組織は、裏稼業における知識やノウハウを充分に蓄積できておらず、また他組織とのネットワークも充分に形成できていません。また資金が溜まっていない為、赤字覚悟で事業を立ち上げていく余裕もありません。以上から、新興アウトロー組織は、資金回収期間の短いビジネスを選好してしまうと考えられます。

 400マウォゾの誘拐対象が一般人にも及んでいたことから、400マウォゾの徴収範囲は広いことが分かります。 400マウォゾのトップは、ジョセフ・ウィルソン(Joseph Wilson)でした(*2)。400マウォゾは、主にクロワ・デ・ブーケ(ポルトープランスの郊外)で活動していました(*2)。また400マウォゾはクロワ・デ・ブーケ以外の地域にも進出していました(*2)。

<引用・参考文献>

*1 InSight Crimeサイト「G9 and Family」(InSight Crime,2022年7月18日)

https://insightcrime.org/haiti-organized-crime-news/g9-family-profile/

*2 InSight Crimeサイト「400 Mawozo」(InSight Crime,2022年3月23日)

https://insightcrime.org/haiti-organized-crime-news/400-mawozo/

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