ロンナーズ

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 ロンナーズ(Loners)は、カナダのオンタリオ州を本拠地としたバイカーギャングでした(*1)。ロンナーズはカナダのオンタリオ州内でウッドブリッジ、リッチモンドヒル、トロント、ロンドン、ウィンザーに支部を置いていました(*2)。

 カナダには「10州」と「3準州」があります。州はプリンス・エドワード・アイランド州、ノヴァスコシア州、ニューブランズウィック州、ニューファンドランド・ラブラドール州、ケベック州、オンタリオ州、マニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州の10州です。準州は、ヌナヴト準州、ノースウエスト準州、ユーコン準州の3つです。3準州とも極北地域にあります。

 またロンナーズはイタリアではレッジョ・ディ・カラブリア(カラブリア州)、メッシーナ(シチリア自治州)、ブローロ(シチリア自治州)、アヴェッリーノ(カンパニア州)、ナポリ(カンパニア州)、サレルノ(カンパニア州)、イゼルニア(モリーゼ州)に支部を持っていました(*2)。またポルトガルのアゾレス諸島にもロンナーズは支部を持っていました(*2)。

 ロンナーズにはイタリア系アウトロー組織(いわゆる「マフィア」)構成員の甥や息子達が多くいました(*3)。

 1990年代後半アメリカ合衆国系バイカーギャング「ヘルズ・エンジェルス」(Hell’s Angels)がオンタリオ州に進出を企てた際、地元組織のロンナーズを組み入れようとしました(*3)。ヘルズ・エンジェルスはロンナーズに対し、「カット(Cut)」(組織独自のワッペンが付いた服)から「Ontario」(オンタリオ)の文字を外すよう圧力をかけてきました(*4)。

 バイカーギャング業界においてワッペンは「パッチ」(patch)と呼ばれます(*5)。各バイカーギャングは独自のパッチを持っています(*5) 。構成員らはパッチを袖なしレザーもしくはデニムベストの背部に縫い付けて着用します(*5) (*6)。パッチは通常「上段(top rocker)」「組織ロゴ」「下段(bottom rocker)」の3つあります(*5)。

 上段(top rocker)には「組織名」、下段(bottom rocker)には「組織もしくは支部の活動場所(地名)」が入ります(*5)。準構成員は下段パッチのみ付けることが認められています(*6)。ゆえにロンナーズ構成員らのカット背部下段には、「Ontario」(オンタリオ)の文字が入っていたのでしょう。

 ちなみにアメリカ合衆国系大手バイカーギャングでオンタリオ州に初めて進出したのは「アウトローズ」(Outlaws)でした(*7)。アウトローズは1977年夏、オンタリオ州に進出、地元組織「サタンズ・チョイス」(Satan’s Choice)の1支部を傘下に収めました(*7) (*8)。

 加えて同年(1977年)内にアウトローズはサタンズ・チョイスのモントリオール(ケベック州)の支部等、3支部も傘下に収めました(*8)。つまりアウトローズは1977年に、サタンズ・チョイスの4支部を傘下に置いたのです。同年(1977年)12月モントリオールの「ポパイズ」(Popeyes)の構成員25人がヘルズ・エンジェルスに移籍しました(*8)。ヘルズ・エンジェルスも1977年にケベック州モントリオールには進出していたのです。

 当時のロンナーズはヘルズ・エンジェルスの企てに反対したようでした(*3)。しかし2000年ヘルズ・エンジェルスが再びオンタリオ州に進出(*3)、同年(2000年)12月29日にオンタリオ州の「ダイス・ライダーズ」(Dice Riders)、サタンズ・チョイス、「ラスト・チャンス」(Last Chance)、「ロス・ロボス」(Los Lobos)、ロンナーズ等のメンバーほぼ200人を傘下に収めました(*7)。この時、ロンナーズのオンタリオ州勢の多くはヘルズ・エンジェルスに移籍しました(*3)。

 他方、ロンナーズのオンタリオ州勢の中にはバンディドスに移籍する者達もいました(*4)。ロンナーズの一部勢力は2001年5月22日に「バンディドスの準構成員」になり (*4)、同年12月1日「バンディドスの正式構成員」に昇格しました(*9)。1999年12月からロンナーズはアメリカ合衆国系バイカーギャング「バンディドス」(Bandidos)と緩やかな関係を持っていました(*4)。

 ロンドン支部のウェイン・ケレスティン(Wayne Kellestine)とボクサー・ムセデレ(Boxer Muscedere)、加えてウッドブリッジ支部とリッチモンドヒル支部の十数人の構成員が、先述のように、ロンナーズからバンディドスに移籍しました(*4) (*10)。

 バンディドスに移籍した一因としては、2001年4月12日にヘルズ・エンジェルスがオンタリオ州ロンドンに仮支部を設けたことがありました(*4)。ロンナーズの一部勢力がバンディドスに移籍したのは「2001年5月22日」でした。

 ちなみに2002年春、ウェイン・ケレスティンは収監中でした(*11)。2005年までにウェイン・ケレスティンは釈放されました(*12)。

 ウェイン・ケレスティンとボクサー・ムセデレは元々「アニヒレーターズ」(Annihilators)というバイカーギャングで活動していました(*10)。アニヒレーターズはオンタリオ州ロンドンを本拠地としてきました(*1)。1988年までにウェイン・ケレスティンは、アニヒレーターズのトップに就きました(*13)。

 またウェイン・ケレスティンは過去に「ホロコースト」(Holocaust)というバイカーギャングを結成していました(*13)。ホロコーストとは、ナチス・ドイツがユダヤ人に対して行った大量虐殺のことです。ウェイン・ケレスティンは、アドルフ・ヒトラー(ナチスの指導者)を崇拝していました(*13)。バイカーギャングのホロコーストは、後に消滅しました(*13)。

 1999年6月2日、アニヒレーターズはロンナーズに加入しました(*1) (*10)。旧アニヒレーターズは「ロンナーズのロンドン支部」になりました(*10)。ロンナーズへの加入時、アニヒレーターズのトップはウェイン・ケレスティンでした(*1)。以上からウェイン・ケレスティンとボクサー・ムセデレの「ロンナーズ在籍期間」は約2年だったことが分かります。

 カナダの警察組織は2001年から「プロジェクト・アミーゴ」(Project Amigo)という名のバンディドス・カナダ勢(オンタリオ州とケベック州)に対する取締りを実施、60人以上の構成員を検挙しました(*14)。ケベック州勢のバンディドス構成員はほとんど逮捕されました(*14)。「プロジェクト・アミーゴ」という名の取締りは2002年6月に終了しました(*14)。

 先述の元アニヒレーターズ及びロンナーズのボクサー・ムセデレは、プロジェクト・アミーゴによる検挙から免れていた為、バンディドス・カナダ勢のトップに就きました(*15)。

 プロジェクト・アミーゴ終了(2002年6月)以降、ボクサー・ムセデレらバンディドスのトロント支部は自らを「ノー・サレンダー・クルー」(No Surrender Crew)と呼ぶようになりました(*16)。

 トロント、キングストン(オンタリオ州)にはバンディドスの支部がありました(*16)。しかしキングストン支部はプロジェクト・アミーゴ終了後、活動を停止したようでした(*16)。

 バンディドスのトロント支部はクラブハウスを持っていなかった為、支部の定例会議(church meeting)を開けませんでした(*17)。ゆえにトロント支部の構成員達は、土曜日の午後や日曜日の夜等に、構成員の家で会っていました(*17)。

 最後にロンナーズの話をすると、2001年以前にロンナーズはアイルランドの「デビルズ・ディサイプルズ」(Devil’s Disciples)を傘下に収めようとしました(*18)。1990年代後半ロンナーズはアイルランド在住の構成員を抱えるなど、アイルランドとつながりを持っていました(*18)。しかしデビルズ・ディサイプルズはロンナーズに加入せず、独立団体として活動していきました(*18)。

 デビルズ・ディサイプルズは「アイルランド同盟」(Alliance Ireland)の一員でした(*19)。1999年時点アイルランド同盟は活動していました(*18)。アイルランド同盟とは、アイルランドの独立系バイカーギャングの連合体でした(*18)。アイルランド同盟の目的としては、ヘルズ・エンジェルスのようなグローバルに活動するバイカーギャングから縄張りを守ることがありました(*18)。

<引用・参考文献>

*1『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』(Alex Caine,2010,Vintage Canada),p74

*2 『The Bandido Massacre』(Peter Edwards,2012,‎ HarperCollins Publishers), p82

*3 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p78

*4 『The Bandido Massacre』, p87-88

*5 『Biker Gangs and Transnational Organized Crime Second Edition』(Thomas Barker,2014,Routledge),p9-10

*6 『The Brotherhoods: Inside the Outlaw Motorcycle Clubs』(Arthur Veno,2012,Allen & Unwin), p49

*7 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p55-56

*8 『Outlaws: Inside the Hell’s Angel Biker Wars』(Tony Thompson,2012,Hodder Paperback), p175

*9 『The Bandido Massacre』, p93

*10 『The Bandido Massacre』, p81

*11 『The Bandido Massacre』, p99

*12 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p79

*13 『The Bandido Massacre』, p73-74

*14 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p63

*15 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p64

*16 『The Fat Mexican: The Bloody Rise of the Bandidos Motorcycle Club』, p65

*17 『The Bandido Massacre』, p107

*18 『The Bandido Massacre』, p111

*19 『Outlaws: Inside the Hell’s Angel Biker Wars』, p132,348

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