世界各地のアウトロー組織と「決済の力」

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 アウトロー組織が、国外から違法薬物等を調達する場合、調達先の組織(外国の組織)に決済(代金の支払い)をしなければなりません。

 合法領域のビジネスであれば、金融機関を利用した決済が一般的です。アウトロー組織も、「支配下の合法企業」を介在させれば、金融機関の送金サービスを「間接的」に利用できます。典型的なのが、企業間決済を装う方法です。

 「金融機関利用以外の決済方法」としては、現金決済、物々交換(バーター取引)、仮想通貨決済等が考えられます。今回は、アウトロー組織の「現金決済」「物々交換」について考えてみます。

 国及び地域によって「決済の力」は異なってきます。例えば「通貨の弱い国のアウトロー組織」よりも「通貨の強い国のアウトロー組織」の方が調達において有利です。つまり「通貨の強い国のアウトロー組織」の方が、決済の力は強いのです。

 アルゼンチンのアウトロー組織がコカインを国外から調達する場合、自国通貨アルゼンチン・ペソで決済するのは困難でしょう。アルゼンチン・ペソは「弱い通貨」として認識されているからです。アルゼンチンのアウトロー組織は、通貨での決済であれば、米ドル等を外国の組織に支払わなければならないでしょう。アルゼンチンのアウトロー組織にとって、自国通貨から米ドル等に交換するコストが生じます。アルゼンチン最強のアウトロー組織でさえも、自国通貨から米ドル等に交換するコストからは免れません。

 一方、アメリカ合衆国のアウトロー組織がコカインを国外から調達しようとしたら、自国通貨の米ドルを払えば済むはずです。当然、アメリカ合衆国のアウトロー組織は、他の通貨に交換するコストとは無縁です。

 世界の中で一番強い通貨は米ドルで、次に来るのがユーロや円でしょう。

 物々交換においては「高い価値の物を提供できる国のアウトロー組織」が調達において有利です。つまり決済の力が強いといえます。

 裏社会において「高い価値の物」とは、違法薬物(保存の利くものに限る)、銃器、盗難車、金(ゴールド)等が考えられます。共通点としては、転売しやすい物(換金性の高い物)が挙げられます。

 違法薬物は「保存の利くもの」と「保存の利かないもの」とに分かれます。マリファナ(乾燥大麻)の賞味期限は短く、7~10日で鮮度が落ちるといわれています(*1)。ちなみにイエメンの嗜好品カートも、賞味期限が短いです。カートとは、植物カートのことで、カチノンという化合物が含まれています(*2)。カチノンにはアンフェタミン(覚醒剤の一種)と同様の薬効があります(*2)。カートの「新鮮な葉」にカチノンが多く含まれています(*2)。ゆえにカートは早朝収穫され、当時午後には消費されました(*3)。消費者はカートを噛んで摂取します(*3)。ちなみにエチオピア、ケニア、イエメンにおいてカートは合法化されていました(*4)。以上からマリファナ、カートは「保存の利く違法薬物」には該当しないと考えられます。

 ヤクザ組織が覚醒剤を国外から調達する際、決済を物々交換で行ったとします。その場合ヤクザ組織が日本産マリファナを提供しても、調達先の組織(外国の組織)は拒否してくるでしょう。

 一方コロンビアのアウトロー組織が国外から銃器を調達する際、決済を物々交換で行ったとします。その場合コロンビアの組織がコカインを提供したら、調達先の組織(外国の組織)はコカインを受け取り、物々交換は成立するでしょう。

 また上記の「有利な決済手段」が多ければ多いほど、決済の力は強いといえます。

 最後に世界各地域のアウトロー組織を筆者の任意で取りあげていきます。そのアウトロー組織の「有利であると考えられる決済手段」を筆者の知りうる範囲であげていきます。

【アメリカ合衆国のアウトロー組織】

有利であると考えられる決済手段

米ドル(通貨)、銃器 (*5)、煙草(カナダ向け) (*6)

【メキシコの麻薬カルテル】

有利であると考えられる決済手段

コカイン (*7)、ヘロイン (*8)、メタンフェタミン (*9)、フェンタニル (*10)等の違法薬物

【コロンビアのアウトロー組織】

有利であると考えられる決済手段

コカイン(違法薬物)  (*11)

【ベネズエラの採掘ギャング】

有利であると考えられる決済手段

金(ゴールド)(*12)

【イタリアのアウトロー組織】

有利であると考えられる決済手段

ユーロ(通貨)

【ヤクザ組織】

有利であると考えられる決済手段

円(通貨)、盗難車(*13)

【ミャンマーのアウトロー組織】

有利であると考えられる決済手段

メタンフェタミン(覚醒剤の一種)(*14)

<引用・参考文献>

*1 『塀の中の元極道 YouTuberが明かす ヤクザの裏知識』(懲役太郎、2020年、宝島社),p100

*2 『嗜好品カートとイエメン社会』(大坪玲子、2017年、法政大学出版局), p131

*3 『嗜好品カートとイエメン社会』, p16-19

*4 『嗜好品カートとイエメン社会』, p132

*5 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』(Ioan Grillo,2021,Bloomsbury Publishing  Plc),p273-274

*6 『THE  MAPLE SYRUP MAFIA A HISTORY OF ORGANIZED CRIME IN CANADA』(GERG THOMPSON、2014、CreateSpace Independent Publishing Platform), p50-51

*7 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』(David F. Marley,2019,Abc-Clio Inc),p76

*8 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』,p173

*9 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』,p223-224

*10アメリカ合衆国麻薬取締局サイト内「2020全米麻薬脅威評価(National Drug Threat Assessment)」(2021),p67

https://www.dea.gov/sites/default/files/2021-02/DIR-008-21%202020%20National%20Drug%20Threat%20Assessment_WEB.pdf

*11アメリカ合衆国麻薬取締局サイト内「2020全米麻薬脅威評価(National Drug Threat Assessment)」(2021),p71

*12 InSight Crimeサイト「Tren de Guayana」(InSight Crime,2021年1月26日)

https://insightcrime.org/venezuela-organized-crime-news/tren-de-guayana/

*13 『The Vory: Russia’s Super Mafia』(Mark Galeotti,2018, Yale University Press), p202

*14 UNODC(United Nations Office on Drugs and Crime)サイト「Transnational Organized Crime in East Asia and the Pacific A Threat Assessment」(2013),p61-63

https://www.unodc.org/roseap/uploads/archive/documents/Publications/2013/TOCTA_EAP_web.pdf

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