アメリカ合衆国の銃規制法

　アメリカ合衆国では憲法修正第2条（Second Amendment to the Constitution）で、国民の武器保有が認められています(*1)。憲法修正第2条は1791年に制定されました(*1)。

　1968年そのアメリカ合衆国で「銃規制法」（Gun Control Act）が制定されました(*2)。

　銃規制法は重罪人、精神障害を持つ人、家庭内暴力を振るう者等の銃購入を禁止しました(*2)。また銃規制法は「他州への銃器輸送」を禁止しました(*2)。

　イリノイ州シカゴの「ギャングスタ・ディサイプルズ」というアウトロー組織はミシシッピ州から銃器を仕入れていました(*3)。ミシシッピ州では銃器価格が安く、また銃器関連の法律が緩かった為、容易に銃器を購入できたからです(*3)。ギャングスタ・ディサイプルズによるミシシッピ州からの銃器仕入れは、銃規制法違反になります。

　銃規制法において銃器購入者は、販売店で「フォーム4473」(Form 4473)という所定の書類に記入しなければなりませんでした(*2)。フォーム4473には、重罪人であるかどうか等の質問がありました(*2)。

　しかし販売店側は記入内容の正否を確認しなかった為、購入者はフォーム4473の質問に嘘をつくこができました(*2)。

　アメリカ合衆国の銃規制は他にもありました。「連邦アサルトウェポン禁止令」（Federal Assault Weapons Ban）は1994年制定されました(*4)。連邦アサルトウェポン禁止令は、AR-15（自動小銃）やその派生品の販売を制限しました(*5)。

　しかし連邦アサルトウェポン禁止令は「10年間の限時法（時限立法）」であり、2004年に失効しました(*4)。以降、「代理購入者」（straw men）がメキシコと接する州で新規もしくは中古でAR-15のような自動小銃を大量に買い、メキシコに密輸していきました(*6)。

　アメリカ合衆国においてメキシコと接する州は、カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州の4州です。先述したように、銃規制法では「他州への銃器輸送」は禁止されていました。「メキシコに銃器を密輸すること」が最終目的の場合、メキシコと接していない州で銃器を購入すると、「州をまたいでの輸送」もしなければなりません。「州をまたいでの銃器輸送」は、違法行為であり、リスクが伴います。ゆえに「代理購入者」はメキシコと接する州で自動小銃を購入したと考えられます。

　またアメリカ合衆国の銃器は、メキシコを経由し、コロンビアにも運ばれました(*7)。1980年代からメキシコ麻薬カルテルは、アメリカ合衆国の闇市場から仕入れた銃器を、飛行機でコロンビアに密輸していきました (*7)。2000年代コロンビア政府は、メキシコからの銃器航空輸送に対する取締りを強化しました(*7)。

　航空輸送の代替策として、メキシコ麻薬カルテルとコロンビアの組織は、陸路をとることにしました(*7)。メキシコからホンジュラスやパナマまで銃器を運び、そこからは銃器を陸路でダリエン地峡を超えてコロンビアまで運ぶ方法がとられました(*7)。

＜引用・参考文献＞

*1 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』（Ioan Grillo，2021，Bloomsbury Publishing  Plc）, p53

*2 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』, p55

*3 『Dixieland Gangs & Disruptive Groups: Crime & Impact on the Southeast United States(English Edition) Kindle版』（Gabe Morales，2021，Amazon Services International）

*4 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』, p57-58

*5 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』（David F. Marley，2019，Abc-Clio Inc）, p13

*6 『Mexican Cartels: An Encyclopedia of Mexico’s Crime and Drug Wars』, p14

*7 『Blood Gun Money: How America Arms Gangs and Cartels』, p273-274